2008-12-19

危機しのげるか関西中小 人材不足一転、人余り

:::引用:::
 「『金融モノ』で食材をまとめ買いする回数が増えた。例年は3―4回だが今年はすでに10回だ」――。

 給食事業を手掛けるジョイント(堺市)の大田利和社長が打ち明ける金融モノとは、資金繰りが苦しい零細食材業者の求めに応じて給食業者が食材を安くまとめ買いし、大半を他の給食業者に転売する資金繰り慣行だ。

 通常一切れ68円で5000切れ買うブリの切り身なら同38円で20倍の10万切れ買い込む。ジョイント側も仕入れ値を引き下げられる分、手元資金が増え「運転資金を借りる必要性が薄れる」(大田社長)ことで成立する枠組みだ。

▼過去最悪の数字


  受注の減少と並んで経営者の頭を悩ませる金融対策。大阪東信用金庫の調査によると、7―9月期の資金繰り指数(「楽」と答えた企業の割合から「苦しい」を 引いた数値)は前期比4.0ポイント悪化してマイナス12.6となり、2005年10―12月期の調査開始以来最悪となった。10―12月期はさらに 2.8ポイントの悪化を見込む。

 政府は景気悪化に歯止めをかけようと、金融機関の貸し渋り阻止に異例の対策を相次ぎ打ち出している。

 「金融庁が通常とは逆に、貸し出しが減っている支店を選んで検査に入っているらしい」。民間金融機関の間ではいま、この話題で持ちきりだ。通常甘い審査による貸し出しが問題になるが「最近は中小への貸し渋りをしていないかを見られる」(地方銀行)という。

 金利減免などで従来なら不良債権とみなされた債権は、5年で貸出先の業績が回復するデータがあれば「正常先」になる。貸し出し余力が減らないよう、有価証券の含み損の一部を自己資本比率に反映しなくて済む仕組みも導入した。

 近畿財務局の調べによると、10月の関西地区金融機関の貸出金残高は前年同月比1.7%増とここ数年で最大の伸びを記録。信用保証協会には融資を求める中小の経営者が詰めかける。

 だが、数字とは裏腹に、企業の「息苦しさ」は増す一方だ。

▼公的融資仰ぐ

 「主力行がなかなか融資に応じてくれない」。東大阪市の金属加工会社社長は危機感を募らせる。素材価格高騰を転嫁できないまま逆に素材が急落。取引先から値下げを要求され四苦八苦している。「今月の自分の給料が出せるのかさえ分からない」ほどの窮状だ。

 鋼材商社、日本磨帯鋼(大阪市)は今夏、日本政策金融公庫から無担保無保証で融資が受けられる小企業等経営改善資金融資(マル経)制度で950万円を借り入れた。取引行が地銀1行で「リスク分散には公的資金も活用したかった」(杉本幸久社長)という。

 長く減少が続いていた関西のマル経融資額は08年に入ってから増加に転じ、10月は前年同月比34%増。大阪支店は「企業の資金繰りがそれだけ苦しいということではないか」と分析する。

 「中小向け融資は財務内容などのランク付けによる方法を重視せざるを得ない」。大阪市内の検査機器会社社長はある会合で、大手行幹部のこの一言で会場に 緊張感が走ったと証言する。大手企業が資金繰りを金融機関からの借り入れにシフトし中小の「取り分」が減るとの見方も広がる。

 貸す側と借りる側双方の事情が複雑に絡み合う資金繰り問題は、難局を乗り切ろうとする中小経営者に重くのしかかろうとしている。 11月下旬、京セラドーム大阪で開かれた2010年度新卒向け就職説明会。約4万2000人が詰めかけた会場には中小企業のブースも多数見られた。主催 した毎日コミュニケーションズによると、同社のサイトなどを通じて採用活動をしている従業員300人未満の関西企業は10月末時点で515社。前年に比べ て若干ながら増えているという。


同社の三谷昌彦・大阪支社長は「景気が悪いからといって採用をやめるところは少ない」と指摘する一方、「実際の採用人数を決めるのはこれから。減らすところが出る可能性もある」とも話す。

 こうした見方を裏打ちするように、説明会に出展した食品加工機械製造のなんつね(大阪府藤井寺市)の南常之副社長は「10年春採用は来春入社の半分の4―5人に減らすつもり。今年終わった採用活動では予定を上回る人数に内定を出したのだが」と話す。

▼広がる雇用削減

 中小企業はここ数年の大手の積極採用で人材不足に悩まされてきたが、景気悪化で状況が一変。日銀大阪支店が発表した関西2府4県の12月の企業短期経済 観測調査(短観)によると、雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」を引いた中小企業の雇用人員判断指数(DI)はプラス5で9月より5ポイ ント悪化。04年6月(プラス1)以来の過剰超に転じた。

 情報システム開発、テクニカルシステム(大阪市)の山岡俊彦社長は「先行きは不透明だし新卒を育てる余裕があるかどうか分からない。採用しない選択肢もあり得る」。景気悪化を受けた企業のIT(情報技術)投資抑制の動きが、人材獲得に二の足を踏ませているのだ。

 雇用削減の動きも広がっている。大阪が地盤の派遣会社、竹下産業(大阪市)では11月、派遣先からの契約解除が通常の3倍以上の15件に上った。「自動 車、建設機械などで下請け企業の受注が激減したあおりを受けている」。大阪労働局によると1カ月間に30人以上解雇した従業員300人未満の事業所は 4―10月だけで前年同期より18カ所多い50カ所に上った。

▼「厳しくとも…」

 一方、大手の採用抑制は優秀な人材獲得の好機でもある。板金加工、仁張工作所(東大阪市)は新規採用を継続する。08年度の売上高は前年度比14%減る見通しだが「3―5年先を考えれば、厳しくても人材は育成すべきだ」(仁張正之社長)と判断した。


梅南鋼材は業績低下時も採用を続け収益改善につなげた(大阪市)

鋼 材商社、梅南鋼材(大阪市、堂上勝己社長)は業績が振るわなかった05年度からあえて採用を再開。レーザー加工機を使いこなせるよう若手を訓練した上で、 販売先の要望に応じて加工する事業で成果を上げている。中途採用に力を入れる精密機械加工、三陽鉄工(大阪市)の水戸祥登社長は「景気後退期こそいい人材 が獲得できる」と話す。

 バブル経済崩壊後の「就職氷河期」に新卒採用をやめ、働き盛りの従業員を欠く中小も少なくない。東大阪商工会議所の平本善憲常務理事は「採用をやめると技術を伝承できず、中核になる人材が育たないツケが回る」と指摘する。

 目先の危機に対応しながら、いかに長期的な視
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