米蒸留酒メーカー、ブラウンフォーマンのプレミアムバーボンウイスキー「ウッドフォードリザーブ」。中国人ジャーナリストのチウ・ディーウェンさんは口をつけると、グラスをかかげてその色合いに見とれた。
柔らかな口当たりと軽い後口。「中国にもこんなウイスキーがあったらいいのに。中国では未熟でとがった味のウイスキーばかりで…」
米国バーボン業界の幹部3人はほほえみ、声をそろえた。
「だからこそ、みなさんをお呼びしたのです」
◆記者ら対象にツアー
米国のウイスキーメーカー各社を巡る1週間のツアーでの一こまである。中国の月刊誌『酒尚』のコラムニストであるチウ氏ら、中国人ジャーナリスト6人がケンタッキー、テネシー、バージニア各州を訪れた。
フォーチュン・ブランズが所有するジム・ビーム蒸留所で、ブルーグラスのコンサートを堪能したり、ケンタッキー州最大の都市、ルイビルではウサギのリゾットに舌鼓を打った。仏酒造大手ペルノ・リカールが取り扱う「ワイルドターキー」の熟練酒造家との対談もこなした。
米政府が経費の一部負担しており、記者らはその代償として、米国製蒸留酒を称賛する記事を書くことになる。ツアーに資金提供した政府プログラムの責任 者、米農務省(USDA)のバレリー・ボウルズ氏は「酒造会社の利益に結びつく、すばらしい記事を期待している」と語った。
狙いは、経済低迷にあえぐ米国蒸留所の新規顧客開拓。中国は米国の基軸産業である電子機器、トラック、金属くず、綿などの輸出先として急成長している。可処分所得を持つおよそ2億人の消費者は米国産ウイスキーの有力マーケットとして注目されている。
「中国の景気減速により、現在の需要予測が変わることはない」と強気の見方を示すのは、USDA調査部門のモーリス・ハウス副長官。同氏は「税金が安く、中産階級の成長は続くはず」と指摘する。
◆高級品出荷量24%増
これまでのところ、中国のニューリッチ層に好まれている銘柄は、英国産のスコッチ「ジョニー・ウォーカー」や仏国産コニャック「レミーマルタ ン」など。USDAの報告によれば、250億ドル(約2兆3200億円)規模の中国市場で、最高級品の輸入額が占める割合は10%。昨年の米国ウイスキー 輸入額はわずか500万ドルだったが、今年8カ月間で出荷量が24%増え、米国内の販売不振を相殺している。
バーボン銘柄「メーカーズマーク」を所有するフォーチュン・ブランズの経営幹部、ブルース・カーボナリ氏は「中国、ロシア、インド、ブラジルと いった新興市場が西洋の蒸留酒に関心を寄せている。われわれのような企業が成長できる絶好のチャンス」と意気込む。中国では「ジム・ビーム」「ジャックダ ニエル」という輸入品が「ぜいたく」「名声」「高い社会的地位」の象徴とみなされるという。
◆早くも手応え…
![]() プレミアムバーボンウィスキー「ウッドフォ-ドリザーブ」を試飲するチウ・ディーウェンさん(ブルームバーグ) |
ツアーに参加した媒体は、『コスモポリタン』(中国版)や男性向けの『フォーヒム・マガジン』『フード・アンド・ワイン』などで、各誌の発行部数を合計すると、1カ月に200万部以上になる。訴求ターゲットは独立心と高級志向の強い若い世代だ。
ツアーの最初の訪問場所は、メーカーズマークの故郷、ケンタッキー州ロレットだった。最初のテースティングで早くも称賛の声が上がった。
「メーカーズマークは格別。深い歴史を感じさせる」とフォーヒム・マガジンのチェン・ジュンファン氏という。
バーボンは、熟成に6年以上の時間がかかるため、供給に限りがある。自称「ジム・ビーム博士」の芸能人、バーニー・ルベルス氏は「インドや中国で人気が出たら、在庫がなくなってしまう」と心配顔だ。
ウッドフォードリザーブの人気に火が付くのは間近だ。最初の一口の後で興奮した中国語が飛び交っていた。その後すぐに、通訳のバーバラ・リーさんがこう訳した。
「どこかで買い物ができませんか? このウイスキーを購入したいのですが…」(Mark Drajem)
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