◆38歳女性「この年で、長崎で、いい出会いは期待できないのかな」
◇適齢期の男女比に差、行政の対策も手探り
長崎県中央部の大村市。湾を見下ろす高台の農場レストランに16日、県内から30代中心の男女各12人が集まった。県が06年に始めた出会い事業 「ながさきめぐりあい」のイベント。この日は一定時間ごとに席を移り全員の異性と話すのが基本ルール。緊張で静まり返った会場の空気はスタートの合図で一 変した。
「お仕事は?」
「趣味は?」
限られた時間内に相手を知ろうと矢継ぎ早に質問をぶつけ合う。会話を楽しむというより、真剣勝負の趣だ。
高揚感はラストのカップル発表で最高潮に。だが、それは同時に、大半の参加者が落胆する瞬間でもあった。成立したカップルは3組。祝福の拍手は空虚で、むしろ脱力感が会場に漂った。
少子化対策の一環で、地方を中心に男女の出会いを行政が後押しする事業が広がっている。長崎県は今年度から、県青年団連合会に補助金を出す形に改 めた。イベントは飲食店などが主催する。その数は通算200回を超え、男女延べ4000人以上が参加。9組が結婚にこぎ着けた。
看護師の美香さん(38)=仮名=は10回以上参加した。でも、「いい思いをしたことがない」。参加を重ねるにつれ、別のイベントで顔を合わせた男性も目に付く。「また来たの」「長崎は適齢期の女性が余ってるからね」--。デリカシーのない言葉に傷付く。
結婚を意識したのは35歳を過ぎてから。「それまでは仕事中心で、恋愛にはのほほんとしていた」。すぐに結婚するより、相手を知る過程を大切にするような出会いがしたい。だが、長崎を取り巻く状況が難しくしている。
「26、27歳のころはいい縁談もあった。この年で、長崎で、いい出会いを期待するのはもう無理なのかな」
国勢調査などによると、長崎県の30~34歳の未婚率(05年)は、男性が都道府県別で44位(41・4%)、女性は10位(31・5%)とギャップが目立つ。
長崎県の高校新卒者は雇用の縮小により県外就職率が男女とも全国3位と高いが、特に男性は半数を超える。シンクタンク「長崎経済研究所」の中村政 博・主席研究員は「結婚適齢期の女性が男性より1割近く多いことが、長崎での女性の非婚化、晩婚化に影響している」と分析する。
結婚と地域経済は相関関係がみられる。景気が悪い地域では、雇用の場を求め若者が流出しがちで、地元に残っても低賃金が結婚に二の足を踏ませることが多い。高校新卒者の県外就職状況は地域により極端な差がある=表参照。男女ギャップは出会いを狭めることにもなる。
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人口1000人当たりの婚姻件数を示す婚姻率が00年から8年連続で全国最下位の秋田県。北部の北秋田市(人口約3万8600人)も昨年から出会 いイベントを始めたが、思わぬ「壁」に悩む。女性の参加がなぜか低調というのだ。参加費を女性だけ格段に下げても、男性21人に女性が4人ということも あった。
同市で家業の精肉店を手伝う鈴木正長(まさたけ)さん(31)は、周辺自治体での開催分を含めて20回近くの参加経験があるが、真剣な交際に発展したことはない。「男性はみんな真剣なのに、女性は『楽しそうなので来てみました』と軽く、温度差にうんざりすることもある」
長崎のように、男女のバランスが崩れているわけではない。市の担当者は「イベント開催はまだ5回なので」と原因に首をひねるばかりだ。
結婚のハードルには地域差もある。そこに対策の難しさがある。【丹野恒一】=第3部おわり
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■読者から
◇愛情注ぐ対象広げ
夫婦ともに子ども好きで、血を継ぐ子がほしいと思っていたのに、医師に「閉経の時期が早く、妊娠しにくいだろう」と言われ泣きました。でも次第に 気持ちが変わりました。不自然なことはしたくないという気持ちがあり、夫はライフワークとして作る美術品が自分の子のように思えるそうで、私は愛情を注ぐ 対象をもっと広げてみようと思いました。全部の子どもや動物や、あらゆるものに。そしたら楽しくなったような気がします。
新たに産むことだけを考えるよりも、まず今この世にいる子どもを、幸せにすべきではないかと思います=茨城県、女性パート従業員(42)
◇将来へ不安尽きず
15日付の記事を読み、自分の未来を見ているようでした。私は一人っ子で、母66歳と同居中。両親は離婚していますが、いずれ別居中の父の面倒を みなければ、と覚悟しています。結婚願望は全くありません。万が一しても、親・子・夫の世話などをとても両立できないでしょう。
現代社会で子どもを安全に育てられる自信も希望もありません。日本では今後、単身世帯が増すばかりでしょう。将来への不安が尽きることはありません=愛知県岡崎市、女性会社員(33)
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■高校新卒者の都道府県別県外就職率(%)
男性 女性 男女計
全国 23.4 15.9 20.2
1位 鹿児島58.4 青森 43.4 青森 48.6
2位 佐賀 53.6 秋田 36.4 鹿児島47.4
3位 長崎 53.1 長崎 36.0 高知 46.0
45位 静岡 8.0 北海道 4.1 富山 6.5
46位 富山 7.6 大阪 3.3 大阪 6.1
47位 愛知 3.4 愛知 1.9 愛知 2.7
※文部科学省「学校基本調査」(07年度)から集計
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