「世界の工場」の総本山、広東省で人材不足が大問題に
2004年後半、中国広東省の広州市と深セン市に挟まれた東莞市の幹線道路沿いで、粗末な台を出して座り込んでいる人の姿を見かけるようになった。「女子工員さん募集中」。台にはそんな文字が書いてある。近くの台湾系メーカーが人材募集をしているのだ。
工場の門に求人の張り紙をしておけば、翌日の朝は仕事を求める若い女の子たちの人だかり──。つい2~3年前までよく見られたそんな光景も今は昔。「世界の工場」の総本山とも言える広東省で一転、人材不足が大問題になっている。
「最初はタダ。その後は女子工員さんが650円を自腹で払い、今は会社が1人につき4500円払っている。採用コストは年々上がるばかりだ」。東莞市にある日系バネメーカー、奄美弾簧の名島清行会長はため息をつく。
タダというのは張り紙による募集のこと。張り紙では思うように人が集まらなくなると企業は「人材市場」と呼ばれる人材紹介会社を使うようになっ た。地方政府や民間で運営されている組織で、企業が求人情報を登録しておくと出稼ぎ労働者をまとめて紹介してくれる。この場合、企業は費用を負担せず、求 職者から仕事の仲介料として650円を徴収する。
しかし、人材市場でも足りなくなった今は、企業が自ら人集めに動かなければならない。目ざとい人はいるもので、工場の多い地域ではそれを代行する 人材ブローカーが現れるようになった。ブローカーは地方に出向き、企業の依頼に基づいて20人、30人といった具合にワーカーを集め、バスに乗せて広東省 へと連れてくる。この場合、メーカーが支払う1人当たりの成功報酬は4500円が相場である。
労働者は「湯水のようにわいてくる」はずが…
「台湾企業60%が求人難」「広東省の香港企業、労働力不足で悲鳴」。2004年後半、香港や華南地方では、人材不足に悩む工場の記事がしばしば 新聞紙上をにぎわした。玩具やアパレルなど労働集約型のメーカーが中心で、生産ラインの休止や稼働率の低下、出荷の遅れといった被害も出始めたという。
労働の需給が逼迫する大きな背景は、外資系メーカーの相次ぐ進出や生産増強によって求人数が増えていることだ。ただ、増えたといっても13億人の 人口に対して広東省は3000万人程度の出稼ぎ労働者しか必要としていない。湯水のようにわいてくると言われていた労働者市場に異変が起こったのはなぜ か。
マブチモーター香港法人の北橋昭彦社長は言う。「経済成長の波及効果で、これまで出稼ぎ労働者を出していた内陸の都市でも働き口が見つかるように なってきたし、外資系企業も低賃金を求めて内陸部に工場を作るようになった。労働者も、多少賃金は安くても郷里に近くて物価が安いところを好む傾向が出て きたのではないか」。
約半分の残業代しか払わない
人手不足や労働争議の報道が繰り返されるにつれ、世界の工場、広東省の知られざる現実も明るみに出てきた。
例えば、賃金への不満から従業員3000人ほどが暴動を起こしたある香港系メーカーの場合、毎月の基本給は3000円で、週40時間の法
2009年10月に創刊40周年を迎える日経ビジネス。この間、日経ビジネスは企業の 栄枯盛衰の現場に立ち会い、多くの記事を掲載し、特集企画では「会社の寿命」「軽・薄・短・小」など時代を切り拓くキーワードを生み出してきました。創刊 40周年のカウントダウン企画として、日経ビジネスが掲載してきた記事を、現在の問題意識から時代を超えてセレクトし、シリーズで掲載します。経営、企 業、マクロ経済、金融、人…、日本経済が直面する問題のヒントが見つかるはずです。
定労働時間を超えると1時間27円の残業代を払っていた。広東省で工場を営んでいる人なら、目を疑う金額だろう。
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