2008-12-02

安曇野の3セク 経営改善 道のり遠く

:::引用:::

 トマト栽培による農業振興を目指し、旧三郷村(現・安曇野市)などが出資した第3セクター「三郷ベジタブル」(現・安曇野菜園、会長・西山馥司副 市長)は、経営改善計画に沿って、販路拡大などに取り組んでいる。第5期(2007年9月~08年8月)決算では、改善の兆しが見られたものの、売上高は 計画を下回っており、再建への道はこれからだ。(永瀬章人)

■設立

 01年、大手スーパーの元幹部、山崎毅氏らが「農業生産法人でトマトを栽培する。用地買収に協力してほしい」と、村に申し入れた。大手食品会社カ ゴメ(名古屋市)への流通経路が確保され、住民約100人を雇用するとの触れ込みだった。村は協力することに決め、地権者との会議や他県の視察など準備を 進めた。

 山崎氏の計画では、温室などの施設の建設費約20億円のうち10億円を国の補助金で賄い、残る10億円は、土地や将来的に建設される建物などを担保に、金融機関から借りる予定だった。しかし、金融機関はこの案を拒否した。

 そこで村は、補助金や起債などで20億円を調達し、村が施設を建設した上で、第3セクターに貸し出す方式に転換。03年11月、資本金6050万円のうち、3100万円を村が出資して、三郷ベジタブルを設立した。

 社長には、山崎氏を迎えた。当時、村長だった西山副市長は「村にはトマト栽培について何の知識もなく、山崎氏には販路や流通についてノウハウがあった」と説明する。

■不振

 同社の生産施設は04年夏、本格稼働。だが、「機械頼みで、温度や日照調節など、夏場のハウス栽培に対する技術力が不足していた」(元村農林商工課長の三沢賢二専務)。

 カゴメの規格にあわせて3種類のトマトを生産し、一定の価格で販売するという契約だったが、規格を満たして引き取ってもらえるのは8割程度。品種 によっては、夏場は3割しか売れないこともあった。光熱費など栽培コストが増大しても売値に反映できない契約のため、第4期(06年9月~07年8月)決 算では約2億4600万円の当期損失を計上、債務超過額は2億5700万円に達した。

 市への施設使用料は、一度も支払われていない。また、村が金融機関と2億2500万円を限度とする損失補償契約を結んでいたため、同社が破綻(はたん)した場合は、市が損失をかぶることになる。同社の借入金は、08年7月時点で約2億円だ。

■立て直し

 同社が今年1月策定した経営改善計画により、山崎元社長は退任。社名も、安曇野菜園に改めた。高糖度のトマト栽培の経験をもつ技術者を技術担当常 務にし、カゴメ以外の販路拡大と独自ブランドのトマト栽培に乗り出した。売上高の目標は、第5期は4億3800万円、第6期からは毎年5億円だ。

 11月に公表された第5期決算で、当期損失は前期比2億1000万円減の約3600万円。温室の温度管理をこまめに行い、ガス代を削減するなどし た成果だという。売上高は前年度を3160万円上回ったものの3億9300万円で、目標を約4500万円下回った。債務超過額は2億9300万円に増え た。

 11月27日に開かれた市議会全員協議会で、三沢専務は第5期決算について報告し、「売上高は計画比90%を達成した」と、成果を強調した。一 方、「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の藤原浩さん(52)は「やればやっただけ赤字が発生している。損失補償契約など市の負担もあるが、今な らまだ痛みは少ない。市に体力があるうちに清算すべきだ」と主張している。

2008年12月2日 読売新聞)

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