2008-12-05

競争を勝ち抜くアウトソーシングの効果的な利用法

:::引用:::
アウトソーシングは、これまで欧米特有のビジネスモデルと考えられてきましたが、昨今、日本国内にも急速に定着し始めています。人材不足に直面する 日本企業の経営幹部が、専門性の高いスキルを備えた外部スタッフによって自社の労働力を補う手段としてアウトソーシングの重要性が理解されるようになった からです。

 同時に、アウトソーシングを戦略として活用することで、多くの利点があることが明らかになってきました。アウトソーシングによって業務の品質が標準化され、社員がより優先度の高いコア業務に注力できる環境をつくることで、企業は事業戦略を成功へと導くことができます。

 経営幹部はこのような知見を持ち、アウトソーシングを正しく理解することが求められるのです。

アウトソーシングに対する変化

 数年前まで、アウトソーシングという概念を受け入れることに躊躇する傾向が日本企業に見られたのは、主に2つの理由からでした。1つは、社外に委 託するよりも大半の業務を社内で処理することで、品質を維持しようという方針のためです。もう1つは、労働力コストの差を活用したコスト削減の手法が、日 本の雇用慣行には馴染まないと考えられていたからです。

 しかしながら、経済発展の鈍化、労働人口の高齢化、IT関連分野を専攻とする大卒者層の減少など、企業がかつて経験したことのないさまざまな要因に直面することで、経営幹部はこうした状況への対応策を真剣に再考し始めています。

 アウトソーシングがハイパフォーマンスビジネスを実現するための主要な要素の1つであることが明確になってきました。アウトソーシングによって社 員がコア業務に専念できることで、自社の技術やビジネスプロセスを向上できる一方、経営コストの削減にも効果的です。従来のアウトソーシング契約の在り方 を一新させ、適切なケイパビリティをバランスよく備えたアウトソーシングプロバイダーを選択することが、これらを成功させるための重要な鍵となるでしょ う。

アウトソーシングに対するアプローチ

 理想的なアウトソーシングは、正社員を確保しながら柔軟性の高い人材プールへのアクセスを可能にし、企業のIT、ならびにビジネスプロセスの向上をもたらします。ビジネス目標を確実に実現するためには、以下に挙げる3つのアプローチ手法が必要です。

人材活用の最適化

 企業の多くは、専門スキルを持つ契約社員によって必要な人材を補っています。そのため、人材派遣会社への支払経費が人件費の75%にも上る場合さ えあります。しかし、戦略的なアウトソーシングを導入すれば、数社の人材派遣会社と個別契約を結ばなくても、最適なグローバルソーシングモデルに則した業 務遂行を、1社のアウトソーシングプロバイダーに託せます。

 調査会社のForrester Researchも同様の調査結果を発表しています。日本企業は人材の調達先を入念に絞り込むことにより、プロバイダーとの信頼関係を確立し、業務プロセスの精度を高め、一貫した管理体制を構築できるとしています。

 われわれアクセンチュアは、ある日本の大手企業において調達プロセスのアウトソーシングを支援した際に、このアプローチを適用しました。この企業 は、過剰な直接材関連の費用支出という深刻な問題を抱えていた上、仕入れ先企業の情報収集やその実績評価、購買交渉を担当できる調達部門の人材不足に悩ま されていました。解決の手段として、アウトソーシングを導入し、調達プロセスの一部を委託することにしたのです。

 グローバルレベルでアウトソーシングに携わった実績から、企業の変革支援や調達アウトソーシングに関する豊富な知見を生かし、この企業との間で、 リスクの負担と成果に応じた報酬型の契約を締結しました。契約に基づき、調達プロセスの改善と業務管理システムの導入も実施しました。こうして、調達部門 の人件費削減を可能にするプロバイダー1社にアウトソースしたことで、同社は早期に調達プロセスの最適化を実現することができました。

価値創出業務への社員の再配置

 アウトソーシングを導入し、定型化した業務、つまりノンコアな業務を外部へ委託することで、社員の業務姿勢にも変化が見られます。有能な社員のコ ア・コンピテンシーを生かし、研究開発などの全く新しい分野に配置することも可能となりますし、また、企業により高い価値をもたらすような業務を担当させ ることで、社員の意欲を刺激し、モチベーションを高めることにもなります。

 日本のある大手ハイテク企業とのアプリケーションアウトソーシング契約において、このアプローチを採用しました。この企業では、増加の一途を辿る ITコストとレガシー環境により、製品の品質向上を主目的とした人材活用が困難な状況に陥っていたため、ノンコアな業務をアウトソースし、研究開発や顧客 のエンゲージメントの獲得を目的とした製品の改善といった業務に、有能な社員を再配置することにしました。

 アウトソーシングを含めた業務編成への移行が円滑に進むよう、われわれはビジネスプロセスの標準化とアプリケーションのマネジメント・プロセスの 改善を提案したのです。また、同社の現行システムとして運用されているアプリケーション管理システムの運用環境を向上させるため、サービスマネジメントシ ステムも新たに開発しました。

 さらに、この企業のITエキスパートの数人を、アプリケーションの運用・保守を専門とするアクセンチュアのスタッフとともに、新たなサービス部署 に移動させました。この新組織が財務、調達、顧客関係管理、ナレッジ・マネジメントといった各システムの運用・保守を担当すると同時に、アプリケーション の開発サービスも手がけることになりました。

コ・ソーシング契約

 自社のITおよびビジネスプロセスを向上させるために、企業はアウトソーシングプロバイダーと自社の双方から必要な人材を集め、コ・ソーシング組 織を編成できます。こうした手法を通じて、企業はアウトソーシングプロバイダーの熟練スタッフを活用しつつ、自社の社員にはITとビジネスプロセスに関す る研修の機会を与え、スキルを高められます。契約期間の満了時には、契約を延長するか、もしくは社員を自社に戻し、習得したナレッジを自社に還元するの か、どちらかを選択することができます。


ルネサステクノロジを支援

 また、日本を代表する半導体企業の1つであるルネサステクノロジと既述のアウトソーシング契約を結びました。IT業務のコスト削減とサービスの品質向上を支援するとともに、同社の情報サービスチームのナレッジとマネジメント能力の強化を推進しました。

 このアプリケーションアウトソーシング契約に基づき、同社はIT担当スタッフを共同チームに異動させ、われわれもこのチームに人材などを提供しま した。業務移行プロセスを経た後、アクセンチュアの有する手法と工業化されたアプローチを活用することで、共同チームはアプリケーションの運用・保守、お よび開発という業務において重要な役割を果たすことになりました。

 同時に、ビジネスプロセスのリエンジニアリングやITポートフォリオの最適化をサポートし、機能面での冗長性排除に努めました。ルネサステクノロ ジはアクセンチュアと連携することで、アプリケーション開発および運用・保守コストを削減し、社員はITに関する最新のナレッジと能力を短期間で吸収する ことができました。

 適切なアウトソーシング・アプローチの確立に加えて、経営幹部はアウトソーシングを支援するプロバイダーの提案内容の有効性を慎重に判断する必要 があります。着目すべき判断材料として、プロジェクトの組織・管理手法、業務および人材のアウトソーシング・モデルの選択(ニアショア、オンショアおよび オフショア)、多様なアプリケーションの運用・保守と生産性を向上させるリエンジニアリング能力、優れたサービス・デリバリー能力などが挙げられます。

 アウトソーシングプロバイダーがどのようにして価値を提供し、コスト削減を実現させるのか、その手法とメカニズムを把握することが、アウトソーシングを成功させるための必須条件といえるでしょう。

戦略的アウトソーシング・プロバイダーの選定

 業務コストの大幅な削減と、企業の変革とを同時に実現するためには、世界レベルの能力、実績に裏打ちされた手法と業務プロセスによる工業化されたアプローチ、必要な語学力を身に付けたエキスパートの集団などが挙げられます。

 われわれは先に述べたようなアウトソーシング支援において、アクセンチュアグローバルデリバリーネットワークを最大限に活用しています。例えば、 大連(中国)にあるデリバリーセンターでは、数多くの日本語に堪能な専門スタッフが常勤しています。このように、日本企業が業務の一部を大連に移管する 際、充分な研修を受けた低コストの人材プールを有効活用し、より一層のコスト削減を実現できるよう支援しています。

アウトソーシングの付加価値として

 企業の経営幹部は、戦略的アウトソーシングの成果として、有能な人材の活用やコスト削減の他にも、以下のようなメリットが得られることを理解しています。

品質の標準化

 企業はアウトソーシングを通して、より効果的にプロセスの品質を確保することが可能です。アクセンチュアはアウトソーシングを導入する際、顧客が 一定レベルの品質を常に維持するために必要とされるリソースの量を正確に算出することができるよう支援します。この品質レベルは、顧客企業とアクセンチュ アが締結するサービス・レベル・アグリーメント(SLA)に記載され、予定されたコストでどの程度の品質レベルが可能かを早期に把握する上での判断材料と なります。

優先順位の高いビジネスケイパビリティに注力

 ITや財務、人事などのビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)により、社員の生産性が一段と向上するだけでなく、社員が専門領域の改善や、新たな技術の習得に取り組むことが可能となります。

市場投入に要する期間短縮など、戦略目標の実現に貢献

 アウトソーシングは、企業が24時間365日休みなく業務を稼働させ、出荷や納品を迅速に行い、機能豊富な製品をどの競合他社よりも早期に市場投 入することを可能にします。実績あるアウトソーシングプロバイダーと提携することで、新興国や新しい市場への参入、新規販売チャネルの開拓、革新的なサー ビスの導入等を、コスト効率よく簡便に実行できるのです。

 戦略的なアプローチによるアウトソーシングは、グローバル化を進める日本企業に新たな競争力をもたらし、差別化を実現するための切り札となります。

競争力を高める差別化のためのアウトソーシング

 ハイパフォーマンスの実現を目指す日本企業、とりわけ世界展開を積極的に進める日本企業の多くは、製品の供給、成長を目指した取り組み、サービス 内容の改革において万全を期す必要があります。そのための第一歩として考えられるのが、アウトソーシングを有効に活用してIT部門や重要なビジネスプロセ スに変革をもたらすことです。これらが改善され、低コスト、低リスクでありながら高い信頼性を備え、機能するようになれば、企業全体の戦略目標を実現する 上で大きな役割を果たすことになるでしょう。

●●コメント●●

0 件のコメント: