2008-12-11

タクシー運転手、不況下の人気 派遣切られた人材どっと

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深刻な景気悪化の中、自動車関連の製造業からタクシー運転手に転職する人が名古屋で目立っている。不景気で売り上げは落ちているものの、タクシー会 社にとっては街中で車を走らせることが客を得る重要な手段だけに、大手各社とも「正社員」という安定した立場を強調したり、職業教育を提供したりするなど して人材確保を目指している。

 名古屋市昭和区の愛知県自動車会館に毎週火、水曜日、二種免許を取ってタクシー会社に採用されたばかりの運転手が集まってくる。運転手の質の向上 を目指そうと、国土交通省が6月から運転手の登録制度を義務づけており、名古屋タクシー協会が登録に必要な講習をしているためだ。毎週の受講者は 30~40人と、協会の当初の予想より10人ほど多い。

 市内の大手に入社した男性(40)は7月までトヨタ自動車の期間工だった。契約満了後はハローワークで約3カ月間、就職活動をしたという。「20社ほど回ったが、正社員で採用してくれたのはここだけだった。厳しい仕事だと思うけど、がんばるしかない」

 トヨタ系部品会社の派遣従業員だった男性(48)も10月、契約期間を1年残して解雇された。「派遣労働者は一斉に切られたから、かなりタクシーに集まってきているはずだ」という。

 タクシー業界は02年の規制緩和で新規参入や増車が進んだ。さらに愛知県内は好調だった製造業に人手を取られ、大手は運転手不足に悩んで北海道や九州・沖縄に募集に回っていた。

 名鉄交通(名古屋市中川区)は04年以来、定年退職や転職で毎年100人近く運転手が減っていた。しかし今年は5月から毎月10人以上のペースで 運転手が入社。同市瑞穂区に社員寮を新たに建設している。特に10月以降は県内の製造業から移る人が出てきたといい、谷口寿一総務部長は「県内の他業種か ら人が入ってくるのは久しぶり。40歳代以下の若手も増えてきた。応募や問い合わせの数は採用数の4~5倍はある」と話す。現在約1100人の社員を来年 は1200人に増やす予定だ。

 社員約2千人と、名古屋地区最大手のつばめグループは今年400人余りを採用。さらに来年は500人を採用する予定だ。11月以降は、やはり自動 車関連産業からの転職が目立つという。天野清美社長は「最近は熱心な志望者が多い。一定の収入があり、社会保険も完備されている正社員のよさがわかっても らえているのでは」という。

 一方で製造業出身者には、接客や地理に不慣れという問題がある。同社は研修期間を5週間に延ばしたり、通常は1回14~18時間の勤務を新人は10時間としたりするなど、仕事に早くなじめる工夫もしているという。

 名古屋タクシー協会によると、名古屋市とその周辺市町のタクシー会社は約100社。一方で運転手の平均年齢は57歳と高齢化し、退職に補充が追いつかない状態だ。

 計約7100台のタクシーのうち、実際に営業している車の割合を示す実働率は、20年前の90%台から今は70%台に落ちた。景気の悪化で、今年 10月の1台あたりの1日の売り上げは前年同月より5%減っている。しかしタクシー会社にとっては、車を走らせなければ収入につながらず、維持経費だけが かさむことになる。名鉄交通は「需要が減っているのは主に法人客。名古屋市東部や日進市などの周辺地域にはまだタクシーが少なく、潜在的な需要はきっとあ る」と強気の姿勢だ。(山吉健太郎)


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