今さら、どうして――。11月下旬。新潟大学4年の
山本純さん(仮名・21)は、栃木県内の両親から、電話で内定取り消しを知らされ、あっけにとられた。
実家と同じ栃木県にある人材派遣会社から5月末、内定をもらった。「派遣会社で、個人の適性に合った仕事を紹介してあげると、その人の人生も変えられる」と考え、第一志望だった。「実家にも戻れる」。すぐに就職を決めた。親も喜んでくれた。
内定後はバイトや旅行、残りの大学生活を楽しんでいた。会社からは、仕事に関する資料も送られてきた。
その会社が、突然、実家と下宿先の両方に内定取り消しの文書を送ってきたのだ。動転し、大学の就職相談の窓口となるキャリアセンター(新潟市西区)へ駆け込んだ。
センターの就職課長、多田夏子さんが相談にのってくれた。
「内定取り消しは解雇と同じ。事前に大学や職業安定所への手続きが必要なのをご存じですか?」。多田さんは会社に電話して問いただした。社員は「知らなかった」と驚いた様子だった。
会社は地元の職安で手続きをとった上で、山本さんに電話でこう言った。「不況で自動車産業がダメージを受けている。今年末での派遣打ち切りが多く、人を派遣できない。入社してもらっても給料を約束できるか分からない」
山本さんは今、同県内を中心に事務職を探している。家族や親戚も就職先を探してくれている。だが、人材募集を終えた会社が多い。
山本さんは「卒業まで4カ月。『決まるかな』という不安もあるし、精神的に厳しい。半年間の就職活動も水の泡。だけど、それを思うと落ち込むので、割り切るようにしている」と話す。
新潟大で景気悪化で内定を取り消されたのは今のところ山本さんだけだが、センターの多田さんは今後増えるのではないかと心配する。「社会 に出ようとしている学生にとって、内定取り消しは本当にショック。会社側の苦しい事情もあると思うが、安易に取り消さないでほしい。万一取り消した場合 は、関連業界への就職支援などフォローをお願いしたい」と訴える。
新潟労働局によると、内定を取り消す場合は、事前に職業安定所や学校側へ通知しなければならない。合理的理由がない場合は、取り消しが無効になる場合もある。(長富由希子)
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●合同就職選考会 異例の来月開催 労働局
「今年は、売り手市場」。そうみていた就職担当者らも、突然の景気悪化には戸惑っている。新潟労働局は1月21日、新潟市中央区の朱鷺(とき)メッセで、大学4年生を対象とした「未内定者合同就職選考会」を開くことを決めた。
同局によると、選考会は例年11月に開催しているが、売り手市場を見越して中止も検討していた。ところが、この秋になって景気が急速に悪化したため、1月開催を決めた。問い合わせはハローワーク新潟若者しごと館(025・240・4510)へ。
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