【北京・大塚卓也】中国政府が、原子力発電所の建設計画を大幅に上積みしたことが明らかになった。従来計画では、2020年までに計4000万キ ロワット相当(100万キロワット級原発40基に相当)の原発を建設する予定だったが、同年までに7000万キロワット相当の原発を建設する。四川省・成 都で今月開かれた米中間の原子力関連セミナーで、中国国家エネルギー局幹部が米国側に伝えた。
中国の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量は、08年までに米国を抜き世界最大になっているとの見方が強い。このため、2012年に期 限切れを迎える京都議定書以後(ポスト京都)の温暖化防止策を話し合う国際交渉では、温室効果ガスの大幅な削減を各国から迫られる可能性が高い。発電時に CO2を排出しない原発の普及に意欲を示すことで、批判をかわす狙いもありそうだ。
中国の発電能力は07年末で7億キロワット強で、このうち7割以上を占める石炭火力発電がCO2の大きな排出源になっている。一方、原発は約 900万キロワット(原発10基前後)で全体の1%強。従来の「原子力中長期発展計画」(07年7月策定)は20年までに原子力の割合を4%まで高める内 容だったが、今回の修正で7~8%に引き上げられることになる。
中国政府は計画修正について、原発建設に協力している東芝傘下の米ウェスチングハウスや仏アレバなどに伝え、原子炉の中核になる圧力容器などの供給体制を増強するよう要請したとみられる。
日本の原発の発電能力は現在約5000万キロワットで、2010年代後半までに1700万キロワット程度引き上げる計画。中国が新計画通り原発建設を続けた場合、日本の原発発電能力を上回る。
中国の急ピッチの原発建設に対し、海外の電力業界からは「1994年の1号機運転開始以来、中国の技術蓄積は進んでいるが、事故を含む情報公開がほとんどなく、安全性がないがしろにされないか不安が残る」との指摘も出ている。
毎日新聞 2008年11月29日 東京夕刊
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