地上デジタルテレビ放送は、国家広電総局(国家ラジオ・映画・テレビ総局)が推進するラジオテレビデジタル化の4大業務の1つであり、五輪開催都 市を含む8都市での試験放送を終えて、まもなく全国展開が始まる。11月8日、国家広電総局科学技術司の王効傑司長は「第4回デジタルニューメディアトッ プフォーラム」の席上、「わが国は25億元の資金を投入し、3年から5年の期間をかけて、全国333の地区級市と2861の県を全面的にカバーする地上デ ジタルテレビシステムを構築する予定だ」と語った。
現在、デジタルケーブルテレビの契約者数は全国で4000万世帯を突破し、33都市で一斉転換が完了している。衛星デジタルテレビへの切り替えで は、西部地域にデジタル放送を届けるため、広電総局が通信衛星「中星9号」を成功裏に打ち上げた。またCMMB(中国モバイルマルチメディア放送基準)モ バイルテレビは37都市をカバーしており、さらに全国展開を進めていく。こうした状況のなかで、地上デジタルテレビ放送の全国展開スケジュールも決まっ た。
ここでいう地上デジタルテレビ放送の推進は、郊外や農村に住む非ケーブルテレビ契約者をターゲットとしており、将来的には約3億世帯をカバーする 見込みだ。また、今回のデジタル化は、財政投資による公益プロジェクトであるため、どのように推進するかについては後日検査されることとなるが、地上デジ タル放送対応セットトップボックスの市場が約3億台の規模となるため、苦しい立場に追い込まれていたセットトップボックスメーカーにチャンスが訪れたこと は明らかだ。
地上デジタルテレビ放送の国家標準は2007年8月1日から強制実施されたが、広電総局はその後しばらくの間、地上デジタルテレビ放送を五輪開催6都市に広州、深センの2都市を加えた8都市に集中させる戦略を展開した。
五輪開催中、地上デジタルテレビ放送は主にこの8都市で、一部の地上デジタルチューナー搭載型テレビやUSBチューナーを接続したパソコンなどに 向けて、中央電視台(CCTV)が始めたハイビジョンチャンネルや地方の現行チャンネルなどのテレビ番組を放送した。放送番組数は計7~10あったが、初 期の対象世帯は50万世帯にも満たなかった。しかしそれ以上に重要なのは、地上デジタルテレビ放送を中心都市に広めることが一番の目的ではないということ だ。普及すれば、デジタルケーブルテレビやモバイルテレビ(華視伝媒=ビジョン・チャイナメディア=を代表とする屋外デジタルテレビ広告企業)が打撃を受 けることになるからだ。地上デジタルテレビ放送の最大のターゲットは、あくまで農村や郊外に住むテレビ視聴者なのである。
デジタルテレビの地上伝送規格に問題がないことは、8都市の試験放送で証明済みだと王効傑司長は述べている。また現在、広電総局傘下の広電規画院 と広播科学院は、その関連基準のほとんどを制定しており、中国の地上デジタル放送規格の全方式に対応した受信チップや地上デジタルチューナー搭載テレビな どの端末には、十分な技術が備わっているという。地上デジタル放送を大々的に推進する時期がやってきた、と王司長は語る。
王司長によると、国家広電総局は来年までに地上デジタル放送を段階的に広めるつもりだという。国が25億元の資金を投じ、3年から5年をかけて全国をカバーする地上デジタルテレビシステムを構築する予定だ。
ある事情通は記者に対し次のように述べた。「地上デジタル放送の普及には約30~40億元が必要だ。このうち25億元は国が援助してくれるため、残りの資金は地方自治体や各地の放送事業者から調達する。これらの資金は数回に分けて投入される予定だ」
地上デジタル放送は、各都市・県の送信設備や伝送設備を経て直接視聴者のテレビへと配信され、視聴者はセットトップボックスか地上デジタルチュー ナー搭載テレビでそれを受信する。セットトップボックスは主に政府が負担して、無料かまたは低価格で視聴者に提供されるが、地上デジタルチューナー搭載テ レビは視聴者自身が購入しなければならない。地上デジタル放送の番組数は一般に30~40あり、中央電視台のチャンネルと地方の衛星テレビ番組が主に放送 される。
地上デジタルテレビ放送が全国に普及するプロセスには二つの段階があるという。第1段階では、37の大、中都市で中央電視台のハイビジョン番組を 放送すると同時に、標準ビジョンのチャンネルでも番組を放送する。第2段階では、333の地区級都市と2861の県で標準ビジョンの番組が同時に流され、 中央、省、市、県の標準ビジョンの番組が放送される。
広電総局科技司の関係者によると、郊外や農村の市場ではケーブルテレビの敷設コストが高すぎるため、ケーブルテレビの時代は長くは続かなかったと いう。デジタルテレビの時代には、地上デジタル放送の配信技術が開発されたため、低コストでの切り替えが可能になったと同氏は語る。
北京や上海、広州などの主要都市ではケーブルテレビの一斉転換によってデジタル化が実現できたが、中西部の奥地では衛星デジタル放送を通じてデジ タルテレビ番組を視聴しており、郊外や農村に住む大部分の視聴者にとっては、地上デジタル放送の方がデジタルテレビ番組を見るには向いている。
ハイビジョンテレビの新チャンネル
地上デジタルテレビ放送の進展について、広電総局はハイビジョンテレビが目覚しい発展を遂げるかが重要なポイントだとみている。北京など8大都市 で地上デジタルテレビ放送を推進した際、視聴者が受信設備の購入を決めた最大の理由はハイビジョン放送を見るためだったからだ。広電総局の張海涛副局長は、家庭で見る場合、既存製品の中ではハイビジョンテレビが最も高品質だと述べた。日本では1980年代からすでに次世代テ レビはハイビジョンテレビだと明言され、ハイビジョンシステムの研究開発に取り組んできた。90年代になると、米国がデジタルのハイビジョンテレビの研究 開発に着手し始め、デジタル技術は信号処理、伝送、保存などの面で絶対的な優位を占めるようになった。このため、それ以降のハイビジョンテレビシステムは デジタル技術をベースに構築されている。
現在、米、日、英、韓、独などの12カ国がハイビジョンデジタル放送を開始している。ハイビジョンのテレビ番組は視聴者からも評判がよく、ゴール デンタイムには欠かせないものとなった。米国の主なテレビ局では、ハイビジョン番組の割合が80%を超えるという。衛星放送会社は150のハイビジョン チャンネルを放送し、ケーブルテレビのハイビジョンチャンネルもすでに30を超えている。
欧州では英国の衛星放送会社、B sky B(British sky Broadcasting)が26のハイビジョンチャンネルを放送し、ルクセンブルク、独、仏、伊、スウェーデンなどの国は、米国の衛星ハイビジョンチャ ンネルの放送を開始している。またBBCなど公共放送局は、地上ハイビジョンチャンネルを開局し、英国、オランダ、ノルウェーのケーブルテレビネットワー クもハイビジョンのテレビチャンネル放送を相次いで開始した。日本ではテレビ局のスタジオ設備が100%ハイビジョン化され、ハイビジョン番組の割合は 90%を超える。衛星テレビは10のハイビジョンチャンネルを、地上波では7つのハイビジョンチャンネルを放送し、5000万世帯以上をカバーしている。 日本のハイビジョンテレビの保有台数は、2007年に約1500万台に達した。
しかし中国では、ハイビジョンテレビの発展はまだ初期段階にある。現在、国内では4つの有料ハイビジョンチャンネル(中視伝媒股有限公司の中央電 視台ハイビジョンチャンネル、上海文広新聞伝媒集団の新視覚チャンネル、深セン電視台のハイビジョンチャンネル、華城電影電視数字節目有限公司のハイビ ジョン映画チャンネル)が放送されているが、受信料が高いため(月額80~120元)、契約者数は5万世帯にも及ばない。
王効傑司長は、現在、国内でハイビジョン及びフルハイビジョンのテレビは徐々に普及しているが、川上のハイビジョンチャンネル放送事業者と中間の伝送チャンネルには限界があると述べた。このことが地上デジタルテレビ放送に発展のチャンスをもたらしたのだ。
ハイビジョンテレビの発展が、地上デジタルテレビの普及が急ピッチで進められていることと密接に関係していることは明らかである。広電総局が全国で地上デジタルテレビ放送の普及を始めたことで、ハイビジョンチャンネルの知名度が上がったからだ。
さらに王効傑司長は次のように述べた。「現在各地域で導入されている地上デジタルテレビシステムは国家標準外のものだ。このため広電総局は、地上 デジタルテレビの試験放送をする過程で、これらの規格外のシステムを、計画的かつ漸進的に国家標準のシステムへと完全に移行する。これによって国家標準の 研究開発者が適切な利益を得ることができるようになる」。
しかし現在、各地の国家標準外の送信、伝送設備に対する広電総局の取り組みには、まだ大きな進展が見られない。北京や広州などの地域では地上デジ タルテレビの設備の取り付けが今年になって完了したのに対し、地方では放送事業者によって初期投資された施設の大部分がコスト回収できていないからであ る。このため国家標準への切り替えは遅々として進まないのだ。
(郎朗=21世紀経済報道、広州発)
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