2008-12-01

10─12月期生産は過去最大の落ち込みになる可能性

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[東京 28日 ロイター] 経済産業省が28日発表した10月鉱工業生産指数速報(2005年=100、季節調整済み)は前月比マイナス3.1%の102.3と2カ月ぶりに低下した。

 さらに11月がマイナス6.4%、12月がマイナス2.9%とこの先の予測指数も大幅に下がっており、10-12月期生産は過去最大の下げ幅にな る公算が大きい。世界経済の大幅な減速がついに日本にも波及してきたことがはっきりし、この先の国内経済は大幅な落ち込みを覚悟しなくてはならない危機 モードに直面した。与謝野馨経済財政担当相も28日の会見で景気は楽観できないと指摘、日銀もこの大幅な生産の落ち込みを注視するとみられる。政府・日銀 一体となった政策対応を迫られる可能性が大きくなってきたとの声が、市場の一部から出ている。

 10月生産では、ロイターの事前予測調査が前月比マイナス2.5%と予想していたが、結果はさらに下回った。最も衝撃的だったのは、11月の予測値だ。マイナス6.4%は、経済産業省が統計を取り始めた1973年5月以来、最大のマイナス幅となった。

 同省は、11月と12月の鉱工業生産見通しが実現した場合、10─12月期の生産指数は97.0となり、03年10─12月期(96.5)以来の 低水準に落ち込み。前期比ではマイナス8.6%になると説明する。この数字は、第1次オイルショックの後遺症に悩まされた1975年1─3月期(マイナス 6.7%)を上回る過去最大のマイナス幅となる。10─12月期も低下となれば、4四半期連続で、ITバブル崩壊時(2001年1─3月期から4四半期連 続で低下)以来の長期低下局面となる。

 <需要減で在庫指数は過去最高水準に>

 経済産業省は生産の基調判断を「低下傾向」として、これまでの「緩やかな低下傾向」から下方修正した。下方修正は2カ月連続。「低下傾向」との表現は、直近の景気の谷だった2002年1月以来という。

 10月の生産指数は06年2月の101.9以来の低水準となった。業種別にみると、輸送機械、電子部品・デバイス、一般機械などが生産低下に寄与 した。輸送機械は国内外で減少。特に乗用車は北米、中東、欧州向けが減少した。電子部品・デバイスも国内外向けの携帯電話、ゲーム向けが減少。一般機械 は、軸受が海外自動車生産向け、半導体電子部品が特に東アジア向けが減少した。

 鉱工業出荷指数は前月比3.1%低下、在庫指数は同1.7%上昇した。在庫指数が109.4、在庫率指数が112.4となり、ともに05年基準で 最高の水準となった。 在庫上昇には、液晶テレビやビデオカメラなど情報通信機械、電子部品・デバイス、はん用内燃機関など一般機械などが寄与した。

 同省によれば、総じて出荷減少が在庫押し上げの主因になったという。鉱工業製品全体の出荷・在庫バランス(出荷の前年比マイナス在庫の前年比)をみると、10月はマイナス11.7%と、9月のマイナス3.8%からマイナス幅が拡大、在庫調整圧力の拡大が示された。 

 製造工業生産予測指数をみると、11月の低下に寄与するとみられるのは輸送機械、一般機械、電子部品・デバイスなど、12月の低下に寄与するとみられるのは輸送機械、電子部品・デバイス、鉄鋼など。同省では、国内外での需要減退が生産低下見通しの主因と指摘した。 

 10─12月期の生産急減の主役は、輸送機械、電子部品デバイスなど輸出関連。外需回復のメドが立たない中で、ともに在庫調整局面にあるためだ。 

 <過去にない大幅な生産調整>

 マーケットの受け止め方も厳しさが増してきた。カブドットコム証券・投資情報局マーケットアナリストの山田勉氏は「10月の前月比は事前の市場予測を下振れた上、11月と12月の予測値がともにマイナスとなっており、リーマン・ブラザーズ(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)の破たん以来、米国を中心として世界的に生産や設備投資に急ブレーキがかかったままであることを裏付けている」と指摘した。

 また、エコノミストからは「過去の生産調整局面にみられない規模の大幅な生産調整となる。08年10月以降、日本の製造業は過去に経験したことが ない減産圧力に直面していることに間違いない」(マネックス証券・チーフエコノミストの村上尚己氏)、「年末から年初にかけての生産の落ち込みは、未曾有 のペースに達する」(野村証券・金融経済研究所・チーフエコノミストの木内登英氏)など、強い危機感がにじみ出ている。 

 BNPパリバ証券・エコノミストの加藤あずさ氏は、外需の下落圧力が大き過ぎて、減産が追いつかない状況にあると指摘。今後のさらなる外需悪化に 加え、在庫調整による生産下押し圧力も加わり、さらに雇用悪化・賃金低下によって消費を始めとする内需の悪化も想定されるとした。こうした点を踏まえ、同 氏は生産が前期比プラスに戻るのは「来年7─9月期」と予想した。

 木内氏も「金融危機に伴う世界経済への悪影響がやや一巡することと、国内財政出動及び米国・中国を中心とする海外での財政出動の影響から、09年 7─9月期には、一時的に増加に転じる可能性を見ておきたい」としたが「その後は再び下落基調に戻り、2010年前半までは緩やかながらも下落基調が続 く」と予想した。

 来年7─9月期に生産がプラス転換したとしても、生産は6四半期連続で低下することになる。バブル経済崩壊後にみられた過去最長の7四半期連続低下(1991年4─6月期から92年10─12月期まで)に迫るものになる可能性が強まってきた。

 <注目される政策対応>

 この結果を踏まえ、与謝野担当相は「これから来年にかけて、楽観できるような状況ではない」と指摘。さらに世界的にデフレ的影響がこれから出てく る可能性があると言及した。その上で年末にかけて政府・日銀は中堅・大企業の資金繰りに配慮していくと述べ、政府・日銀が一体となってこの先の景気状況を 注視し、対応していくスタンスを示した。

 日銀の金融政策スタンスをウォッチしているある市場関係者は「生産の落ち込み幅が予想以上に大きく、日銀の想定を超えている可能性が高い。利下げ余地は限られているものの、日銀が何らかの政策対応を検討するのは間違いないだろう」と述べる。

 東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は「かつてない生産の落ち込みであり、政府が2次補正予算を来年に提出するという状況下では、日銀の 金融政策にしわがよる可能性も捨てきれない。金融政策に偏った政策対応は問題が多いが、生産の落ち込みが示す経済の悪化状況は相当に深刻だ」と指摘してい る。

 (ロイター日本語ニュース 児玉 成夫記者、編集:田巻 一彦)


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