[ニューヨーク 15日 ロイター] 証券大手リーマン・ブラザーズ(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)の破たんとバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)によるメリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)の買収は、すでに悪化している米雇用情勢にとって二重の激震となり、ウォール街で働く金融関係者の給料を押し下げることになりそうだ。
ヘッドハンターや人材コンサルタントらは、ことしに入ってすでに合計10万人を超える雇用削減を行った米金融サービス業界について、さらに最大5万人の失業に備えるべきだと指摘する。
ニューヨークを中心にエグゼクティブの人材紹介を手掛けるオプションズ・グループのマイケル・カープ最高経営責任者(CEO)は「履歴書は15日からたがが外れたようにあふれ始まるだろう」と指摘。今回のリーマンとメリルの「ダブルパンチ」がウォール街や世界の金融業界のことしの報酬・給与水準に深刻な影響を与えると指摘した上で、「金融サービス業界の報酬の黄金時代は終わった」と述べた。
リーマン救済をめぐる関係者による交渉が不調に終わったのとほぼ並行し、米銀2位のバンカメは証券大手メリルの総額500億ドルでの買収を発表。この買収によって米銀最大手となるバンカメだが、ヘッドハンティングの専門家によると、メリルのブローカー以外の従業員6万人のうち、40%に相当する2万4000人が職を失う可能性がある。
破たんしたリーマンの従業員数は約2万6000人。メリルとリーマンで多くの人材が職を失えば、雇用市場には衝撃波として伝わることになる。
人材サービス会社のチャレンジャー・グレー・アンド・クリスマスは15日、2008年の米金融セクターの雇用削減はここまで約10万3000人となっており、過去最高だった2007年の15万3105人を上回る可能性があるとの見方を示した。
また証券大手2社が消えることになれば、金融サービス業界に大きく依存するニューヨーク市にとっても痛手となる。
ニューヨークを拠点とする人材会社ホワイトロックのグスタボ・ドルフィノ氏は「こうした(職を失う)人材の一部は、仕事を求める側となり、選べる立場ではないため、通常なら手にできるものを手にすることができず、お互いに競合することにもなる」と指摘。州政府や連邦政府にとっても税収の大幅な減少につながり、当局は増税するしかなくなるとの見方を示す。
ウォール街はニューヨークにとって最大の雇用源ではないが、経済の頼みの綱ではある。給与水準の高い金融セクターの雇用者1人により、ニューヨークではほかに最大4人分の雇用が創出されると考えられている。
ニューヨーク州のデビッド・パターソン知事は15日、最悪の場合、ウォール街では3万人が解雇される可能性があると指摘した。
信用危機の影響により、ニューヨーク市とニューヨーク州の財政は赤字に陥っている。ニューヨーク市会計監査局のウィリアム・トンプソン氏(民主党)は先週、リーマン救済の行方を「非常に懸念」しているとし、結果次第ではニューヨークの経済と税収にインパクトを与えると警告していた。
世界の株式市場は15日に急落。サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)に関連した資産にエクスポージャーを持つほかの金融機関も危険な状況に追い込まれる可能性が出ている。
リーマンやメリルでの失業は、優秀な人材がますますバイサイドや海外に流出することを意味すると指摘する専門家もいる。カープ氏は「ヘッジファンドや資産運用会社、富裕層相手の個人資産運用管理会社」が、2社での雇用喪失の恩恵を受けると述べた。またドルフィノ氏は、米金融専門家が求められている地域として中東やロシアを挙げ、バイサイドでの需要が強いと指摘している。
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