2008-09-22

総務省の人口調査/町や村が危うくなっている

:::引用:::
 総務省が先ごろ住民基本台帳を基にまとめた3月末現在の人口・人口動態・世帯数は衝撃的な内容である。国の政策誘導が人口構造のゆがみを加速させたのではないか。幾つかの数字がそう語りかけてくるからだ。

 東京・名古屋・大阪の三大都市圏の人口は全国人口の約1億2700万の50%を昨年に引き続いて上回った。増加率が高いのは東京、神奈川、愛知。低いのは秋田、高知、青森などだ。

 先の「好景気」は政治の構造改革路線で傷んだ地域経済に結局は光を当てなかった。調査結果に、大都市部と地方の間の格差が広がりきった現実を重ね合わせる人は少なくないだろう。

 地方の中でも、町村人口の動態にとりわけ深刻さがにじむ。
 12年前から下降曲線をたどり続けている町村人口は今回、前年より20万以上も少ない約1300万余にまで減少した。

 減少した町村人口の6割は国主導の「平成の大合併」で誕生した新市や合併市に移動した人たちで、市部人口は増えた。

 問題なのは、残った町村部の高齢化率(65歳以上の人口比率)が全国平均を4ポイント上回る25.1%に達し、初めて4人に1人を超えてしまったことだ。

 ただでさえ都市部より急速に進む町村部の高齢化は行財政改革を建前とした町村合併という「国策」で加速したわけだ。

 2人に1人が三大都市圏に集まり、町村民の4人に1人が高齢者という不正常をどう見直すのか真剣に考えるべき時だ。

 自民党は「道州制に関する第三次中間報告」で約1800の基礎自治体(市町村)を700―1000に再編(平均人口は30万以上)する方針を出した。日本経団連や道州制反対の民主党も似たり寄ったりの再編構想を持つ。

 自民党はさらに、合併できない(しない)小規模町村は限られた事務しか処理しない近隣市の「内部団体」とし、道州や近隣市の補完責任を求めている。

 平成の大合併で市部人口は全人口の9割近くに達し、町村人口はほぼ1割となった。各報告・構想が地方分権改革に向けて「都市戦略」を重視せざるを得なくなっているのは、こんな現状認識が働くからだろう。

 「大きいことはいいことだ」と言わんばかりの市町村再編が「小さいことは迷惑だ」という空気を生んでいくなら危険だ。

 内需拡大や経済成長の効率を求めるには、大半の小規模町村が抱える過疎地域や過疎と一体的関係にある中山間地農業・沿岸漁業の切り捨ても仕方ないとの議論にもつながりかねない。

 市町村の基礎的単位である地域コミュニティーの活性化策も忘れてはならない論点だ。

 今回の調査は国と地方の行財政効率化を優先して高みからの議論になりがちな地方分権論に警鐘を鳴らしたのではないか。
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