2009-01-07

部課長を訪問するとき,何に気をつければよいか

:::引用:::

SE訪問の価値

 とは言え,筆者が思うに,SEの中には「部課長訪問はSEマネジャの仕事ではないか。なぜSEがしなければならないのか」と疑問を感じている人もいると 思う。SEの方々がそんな疑問を持っていては話が進まないので,それについて少し説明する。SEマネジャが顧客の部課長と話すのとSEが話すのとでは部課 長の対応の仕方が大きく異なる。

 例えば,SEの馬場が顧客の課長と話したとすると,その課長は馬場を“SE個人”として見る。だが,馬場がSEマネジャだとその課長は 馬場個人ではなく“会社”としてみられる。それは馬場がSEマネジャという”長“がつくベンダーの管理者だからだ。ややこしい話になると部課長は「と言わ れても,それは”貴社の問題“ではないか」と言われ,往々に会社対会社の話になりやすい。ユーザーの管理者としては文句を言いたくなくても言わざるを得な いことさえある。

 だが,相手がSEだと違う。SE個人として見られ,会社対会社の話にはなりにくい。顧客の部課長はSEをIT技術の専門家として対応さ れ,自分が考えていることを率直に話して下さる。だが,SEマネジャだと必ずしもそうはいかない。そこにSEが顧客の部課長を訪問する価値がある。SEの 部課長訪問に疑問があるSEの方は,ぜひこのことを考えてみてほしい。

訪問時の6つのポイント

 本論にもどり,SEが部課長訪問する時のポイントについて次に述べる。その主たるものは次の6点である。

 (1)まず,部課長を怖がらないことだ。別に部課長に取って食われるわけはない。“少々失敗して恥をかいてもよい。冷や汗をかいてもよい ”と腹を据え度胸を決めて,部長や課長の席にまず行くことだ。そして,例えば「○○課長,少しお時間を頂けないでしょうか」と話し,続けて「プロジェクト の状況を話したいのですが」とか「我々の日頃の仕事のやり方についてのご意見を聞きたいのですが」とか「ちょっとご相談したいのですが」などと言うこと だ。すると部課長は必ず「そうですか,ではいつが良いのですか」とか「来週何曜日なら良いですが」などと言われ,時間をとってくれるものだ。仮に「?」と 言う態度を示されて断られた場合でも,諦めずに1~2週間後に再度腹をくくって申し込めば,必ず時間はもらえるはずだ。ただ,言うまでもないが,部課長の 方と話す際には,失礼がないように服装・身だしなみ,言葉使いはきちっとしておくことは絶対である。

 (2)次に,部課長とは出来るだけ「1:1」で話すことが望ましい。きっとSEの中には「なぜ,1:1なのか?」と疑問を持つ人がいる と思う。それは「1:1」の方がお互いが本音で話し合えるし,部課長の方も色んな質問をSEにしやすいからだ。多くのプロジェクトでユーザーとベンダーは 進捗会議などの定例会議をやっていると思うが,ちょっとその会議のことを考えて見てほしい。その会議は往々に双方とも形式的な説明や討議になりやすい。あ る意味では儀式のようなものでお互い本音の話にはなり難い。その上,部課長の方は部下やベンダーの人が大勢いる前では初歩的な質問も出来ないし,詳しく知 りたい点があってもなかなか質問も出来ない。定例会議とはそんなものだ。だが,「1:1」ならば違う。部課長の方もSEも本音で話しやすい。部課長の方は ITについて初歩的なことやプロジェクトの疑問点などもSEに質問しやすい。ぜひ,SEの方は「1:1」でやってみてほしい。すると必ず仕事が良い方向に 進むし,部課長も喜ばれる。従って,もし部課長に時間を頂けないかと頼んだときに「誰か呼ぼうか」と言われたら「出来れば課長一人に」と話すことだ。

 (3)さらに,SEは“裸になって”話すことが肝要である。打算は厳禁である。顧客の部課長はSEよりおよそ10歳や20歳くらい年上だ。そんな年下の SEが下手に下心をもって話したり格好つけて話したりしても,すべてお見通しだ。それでは形式的にしか応対してもらえないし,信用されない。そうならない ためには,SEは“裸になって”話すしかない。そして,裸になって「自分たちは貴社のプロジェクトをこれだけ思っているのだ」という気持ちを部課長に分 かってもらうことだ。すると部課長は話を真剣に聞いて下さる。自分の意見も腹を割って話して下さる。また,プロジェクトで困ったときなどに相談すると,部 課長は何か手を打って下さるものだ。しかし,それには前提がある。それはSEが日頃“お客様と我々のゴールは一つ”という気持ちで顧客の担当者としっかり 仕事をしていることだ。時には担当者とけんかしても良い。そんな仕事振りで仕事をしてなくて部課長に「貴社のことを考えて」と言っても部課長の方には通じ るものではない。

 (4)紙一枚もって訪問する。例えば,プロジェクトの説明をするときにはA4版の紙一枚に現在のプロジェクトの状況,問題点,対策など の要点をまとめてそれを持って行くことだ。そして「プロジェクトの状況はご存知だとは思いますが,私から見たプロジェクトの状況を報告します。課長のご意 見を聞かせてください」といって説明する。お願い事項があればそれも書いておく。紙があれば部課長も理解しやすいし,後で何かのときにそのまま使うことも 出来る。

 (5)メリハリのある対話をする。具体的には,自信のないことは言わない。やると言ったことはやる。質問に対しては分かりやすく説明する。あやふやな返事はしない,YES,NOははっきり言う。分からない点は調べて返事する。

 (6)担当者に仁義をきる。SEの中には「SEが部課長と仕事の話をするのを担当者は反対したり嫌な顔をしたりする」などと考えている人 は少なくない。そのときは担当者に黙って訪問しないことが重要だ。そして部課長を訪問することを何か理屈をつけて担当者に前もって言うことだ。例えば,部 課長にこんな情報があったので部課長に話したいとか上司から訪問せよと言われたとかなんとでも理屈はつく。そして,訪問時は担当者のマイナスになることは 言わないことだ。また,場合によっては部課長に話す内容を事前に担当者に説明・相談するのも手だ。それが理にあっていれば,誰も反対しないはずだ。そして 部課長訪問が終わったらこんな話をしたと担当者にその概要を伝える。こんなやり方を2~3回やれば担当者も分かってくれ,その後は協力してくれるはずだ。

 以上,部課長訪問時のポイントについて述べたが,筆者が「度胸だ,裸になれ,1:1で話せ,きちっとした身だしなみでなどと言うと,SEの中には別次元 の話のように受け取られ人もいると思う。だが,第一線のプロジェクト・マネジャやリーダーはこの部課長訪問は避けては通れない道である。

 そのためには,SEは若手SE時代か中堅SE時代に部課長訪問にぜひ挑戦してほしい。IT企業もSEにその機会を与えてほしい。30代 後半になってからそれをやろうとしても失敗を恐れたり打算が働いたりしてなかなかできないものだ。事実,SEマネジャやベテランSEの中には部課長訪問を 避ける人がいる。また,2次請けの責任あるSEの方も部課長訪問を遠慮しないでぜひやってほしい。顧客から見れば元請けのSEも2次請けのSEも区別がな いからだ。次回は部課長訪問についてサマリーする意味も含め,その効用について読者の方と考えてみたい。

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