2008-10-31

「鎖国日本」イメージ刷新の契機にも

:::引用:::

留学生30万人計画

 「教育大国・日本」の構築へとつながる壮大な計画だ。異文化交流や友好親善にも寄与し、わが国の国際競争力の向上にも大きく貢献するに違いない。

 2020年をめどに、大学や研究機関での留学生受け入れ数を現在の12万人から30万人にまで増やす政府の「留学生30万人計画」が、具体化に向 けて動き出した。本格的な留学生拡大策の展開は、1983年の中曽根内閣(当時)による「留学生受け入れ10万人計画」以来、25年ぶりとなる。官民挙げ て全力で取り組んでもらいたい。

 カネ、モノ、情報とともに、ヒトも容易に国境を越えて移動するグローバル化の時代にあって、欧米諸国では早くから優秀な留学生の争奪戦にしのぎを削ってきた。すでに米国は58万人、英国も35万人を受け入れており、非英語圏の仏独でも25万人を突破している。

 これに対して日本は、05年の12万1812人をピークに、ここ数年はむしろ目減り傾向にある。人数でも比率でも、先進諸国の中で大きく遅れを とっている格好だ。このことが、今なお門戸を開き切れないでいる難民・移民政策と併せ、「鎖国ニッポン」のイメージを増幅させていることは周知の通りであ る。

 30万人計画は、こうした現状を一気に転換しようというもので、「世界の中の日本」の地位向上を図るという外交戦略の上からも極めて重要な意味を持つ。何より留学生の存在そのものが、日本と海外とを結ぶ親善友好大使の役割を担っていることを忘れてはなるまい。

 文部科学省など6省がまとめた「計画」の骨子は、「日本留学の動機付け」から「卒業後の支援」まで5本の柱からなる。海外での日本語教育の積極的 な推進や留学希望者のための海外窓口の一元化、拠点となる国内30大学の選定など思い切った具体策が盛り込まれており、政府の“やる気”が見えてくる。

 事実、文科省は今月25日に早速、日本語と英語だけで出題している「日本留学試験」について、新たに中国語と韓国語を加える方針を固めた。受験者数の9割を占める中国と韓国からの留学生が大幅に増え、30万人計画推進への大きな弾みとなるものと期待される。

産学連携の強化を

 ただ、今後12年で2.5倍も増やすという、一見無謀にすら見える「30万人計画」を達成するには、これらの施策だけではいささか心もとないのも事実だ。

 特に、最大の“障壁”である卒業後の支援策については、もう一歩も二歩も踏み込んだ大胆な施策が必要だろう。「就職活動の期間中は在留期間を延長する」(骨子)というだけでは、海外の優秀な学生を日本に呼び込むことなど、到底できない。

 ここは、密接な産学連携で留学生の国内就職を実質的に保障している欧米並みのシステムをぜひとも確立させたいところだ。そのためには、強力な政治のリーダーシップが欠かせないことは言うまでもない。


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