2008-10-27

欧米の衰退と中国の台頭:中国が世界の中心のひとつに

:::引用:::
レッド・センセーション on サーチナ 第16回-田代尚機

  この1年で、世界中の株式市場が大きく調整した。特にリーマンショック以降の下落は、正に歴史的な暴落といっても良いであろう。

   株価変動は、“結果”なのか、それとも“原因”なのか。株価変動は“経済や企業の実態もしくはその見通し”といったファンダメンタルズに基づいて動いた “結果”であり、“景気減速下にある世界経済は今後悪化の一途を辿り大不況に陥る”ことを予見しているのだろうか。それとも、世界の金融市場で大きなシェ アを持つ欧米投資家の都合により株が売られ、“株価下落”が“原因”となり、世界各国の“経済や企業の実態もしくはその見通し”が大きく悪化しているので あろうか。

  どちらにしても、株価の下落が長期に渡り続けば、銀行は株式評価益の減少から、貸出を制限し、企業は設備投資を抑えざるを えなくなろう。また、消費者は逆資産効果から、消費を抑えてしまう。ファンダメンタルズが悪化することによって、株価は更に下落する。こうした負の連鎖に より、経済も株式市場も悪化の一途を辿ってしまう。

  今回の混乱は、アメリカ住宅バブルの崩壊とサブプライム問題に端を発している。欧米金融機関は直接大きなダメージを受けている。個人は住宅価格下落により、資産が目減りしている。欧米投資家は、主に自己の財務上の都合から、世界中の株、投信を売却し始めている。

  アメリカのミューチュアルファンドの統計によると、海外ファンドでは、6月以降、資金流出が続いており、9月後半以降、資金流出は大きく加速している。特に、新興国ファンドの資金流出が大きいようだ。
 
   日本では、市場平均PERでみても、市場平均PBRでみても、歴史的な低さとなっている。バリュエーションが効かない状態である。香港でも、その他の国 でもおおよそ同様だ。現状までの株価動向を総括する限り、まるで、各国の株式市場は欧米投資家に支配され、結果的に経済が支配されているような状態であ る。

  金融の自由化、国際化は誰のためにあるのか。もちろん、欧米からの資金流入によって、世界経済は大きく発展した。そのことは忘れるべきではない。しかし、そのことがもたらすリスクについて、各国政府はもっと強く意識しても良かったのかもしれない。

   アジア通貨危機への教訓から、中国は金融の自由化、国際化、対外開放に関して、極めて漸進的にしか、対応していない。未だに外国人は、QFII制度と いった厳しい制限の中で、例外的にしか人民元建て株式(A株)を買うことができない。そもそも、金融資本取引が対外的に開放されていない。金融投資目的で 資金を送金することすらできない状況である。

  為替取引においては、2005年7月、政府は通貨バスケット制を参考にした変動相場制に移行すると宣言したものの、実際は人民銀行によりコントロールされる管理相場制が続いている。

  WTO加盟前も、加盟後も、アメリカは中国に対して、金融開放を厳しく迫ったが、中国政府は屈しなかった。中国政府は“国家全体が晒されるだろうリスク”をきちんと管理してきたのである。

   もっとも、中国本土の株式市場も大きく調整している。経済も減速傾向にある。しかし、ここで示したように欧米の影響は限定的であり、独自要因の方が大き い。世界経済の減速・後退が長引いたとしても、中国はその影響をあまり受けず、これまで行ってきた中央主導の経済運営によって、経済はそれほど落ち込まな いで済む可能性がある。

  現在の金融危機後には、どのような世界が現れるのであろうか。冷戦後この20年弱の期間、続いてきた自由化、 国際化の流れは途絶え、逆の動きとなるのであろうか。あるいは中国が独自のペースで、欧米が衰退した後の国際金融の世界で、プレゼンスを高めていくのであ ろうか。いずれにしても、中国が世界の中心的な国家のひとつとなる日は間近に迫っている。(執筆者:田代尚機 TS・チャイナ・リサーチ(株)代表取締 役)

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