2009-11-24

中国:本格導入30年、一人っ子政策の岐路 進む高齢化、将来の労働力不足懸念

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 中国の「一人っ子政策」に異変が起きている。本格導入から30年。世界一の人口を抱える中国の人口抑制に大きな役割を果たしてきたが、最近は出生率低下などにより高齢化が進み、むしろ将来の労働力人口の不足が懸念される事態を招いている。一人っ子政策の見直しを巡り賛否が渦巻く中、国内で最も高齢化が進む上海市は、一人っ子同士の夫婦に第2子の出産を奨励し始めた。【上海・鈴木玲子】

 「世界の人口史の奇跡だ」。国家人口計画出産委員会の李斌主任は強調する。中国の総人口は08年末13億2800万人だが、一人っ子政策の導入がなければ17億人を超えていたという。

 1人の女性が一生に産むと推定される子供の数(合計特殊出生率)は、一人っ子政策導入直前の78年が2・72だったのに対し、今や1・8程度だ。

 李主任によると、中国の1人当たり国内総生産(GDP)は08年に3000ドルを突破した。試算では、未導入なら2200ドル程度にとどまったという。

 さらに「地球温暖化の観点からは、二酸化炭素(CO2)排出量を毎年15億トン削減した」などと指摘しており、食糧やエネルギー問題の領域でも、人口抑制に伴うプラスの副産物が少なくない。

 委員会は、総人口は2033年ごろに15億人前後と人口増のピークを迎え、その後は下降線を描くと予測する。

 こうした傾向は、中国の急速な経済発展を背景に、乳幼児死亡率の低下や生活の向上も加わり、顕著になってきた。

 だが、急速な出生率低下は少子高齢化に拍車をかけ、「未富先老」という言葉が現実味を帯び始めた。社会全体が豊かになる前に高齢化問題が深刻さを増してしまう将来への危機感を表す。労働力人口も2016年の9・9億人をピークに減少に転じると予測される。

 今年3月の全人代(=国会)では、人民大学学長の紀宝成代表が「生育政策調整への早期着手」を求める第2子出産承認を盛り込んだ提案書を提出した。インターネットで多くの支持を集め、第2子出産の「解禁」を求める意見が相次ぐ。

 こうした中、中国社会科学院マルクス主義研究院の程恩富院長は「(政策見直しは)賛成できない。確かに高齢化問題の緩和や人口構成の適正化につながったとしても人口増加を高め、人口増ピークの時期を遅らせる」と述べ、人口増による「負の産物」に警戒感を強めている。
 ◇「白髪都市」上海市 第2子出産を奨励

 大都会のけん騒が消え、緑豊かな林が広がる上海市浦東新区の豪華施設「馨月匯(けいげつかい)」。産後の母親と乳児が静養する。1カ月半ほどの利用で費用は最大38万元(約500万円)と高額だ。

 夫が会社社長のピアノ教師、趙瑩〓さん(29)は7月に次男を出産し、施設で過ごした。2人目の理由は「兄弟がいれば勉強もスポーツも一緒に楽しめる。家族がにぎやかになって楽しいから」。家にはベビーシッターと家政婦がいる。第2子は生活にゆとりのある富裕層の象徴だ。

 上海市は79年に高齢化社会(総人口に占める65歳以上の割合が7%を超す)に突入。08年は1391万人の市人口のうち高齢者214万人と15・4%に上った。全国平均のほぼ2倍に当たる。商都・上海の労働力は出稼ぎ農民ら外来人口に依存する。また、中国全体では現役世代3・2人で1人の高齢者を支えるのに対し、上海市では「3人が2人を」という構図だ。

 「白髪都市」(中国紙)加速に危機感を募らせる上海市は02年、一人っ子同士の夫婦に第2子出産を認めるなど条件を緩和。今年7月にはその延長線上で第2子出産の「奨励」を強調した。この発表を一部英紙が「一人っ子政策の撤廃を検討し始めた」と報じ、大騒ぎになった。

 一方、庶民は第2子出産に足踏みする。地元紙の調査では、上海の6歳までの育児費は平均17万元(約223万円)。ベビーシッターや医療保険費のほか、競争が激しい上海では早期教育も欠かせない。

 上海社会科学院人口・発展研究所の周海旺副所長は「第2子出産を後押しする政策を」と求めている。第2子にも一人っ子と同等の優遇策を、というわけだ。一人っ子の家庭には細かな支援があり、親の退職時には2300元(約3万円)を別途支給している。

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 ■ことば
 ◇一人っ子政策

 中国政府は79年、「1組の夫婦に子供1人」を原則に晩婚や晩産を提唱、農民や少数民族には条件付きで2人目以降も許容しつつ、4億人を抑制したと成果を誇る。ただ、弊害も引き起こした。農村部では戸籍外で学校教育が受けられない「黒孩子」(闇っ子)が急増した。都市部の富裕層では過保護に育てられた「小皇帝」の精神的なひ弱さが指摘される。一般に家の後継ぎや働き手として男児を望む傾向が強く、妊娠時に女児と分かり中絶する場合もあり、男女比に偏りが生じた。

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