2009-11-27

「メイド・イン・チャイナからの脱却」――大宇宙信息創造・中山董事長 (1/2)

:::引用:::
中国の急速な経済成長を支えた日用品などの輸出産業が、このたびの世界同時不況によって大打撃を受けた。中国政府は従来の労働集約型のサービスから付加価値の高いサービスへと抜本的な産業の構造変革を図っている。トランスコスモスの現地法人で日本企業向けにシステム開発などのアウトソーシングサービスを手掛ける大宇宙信息創造の中山国慶董事長に話を聞いた。
脱「メイド・イン・チャイナ」
大宇宙信息創造の中山国慶董事長 大宇宙信息創造の中山国慶董事長

――海外でビジネスをする際に国家との付き合い方が重要だといいます。中国では政府に対するコミットメントは求められますか。

中山 政府との関係は日本以上に重要です。しばしば日本で企業と官公庁とのつながりが問題になっていますが、中国も例外ではありません。政府とうまく付き合わないと、たとえ良いビジネスであっても存続が難しくなることもあります。政府関係の会合に積極的に顔を出すなど密なコミュニケーションをとるようにしています。

 幸い、当社が手掛けているIT関連のビジネスは中国政府が奨励しています。中国は急速な経済成長を遂げていますが、それを支えていたのは輸出産業による外需です。衣料品や玩具、生活用品などの加工貿易がビジネスの中心であり、安い労働力、付加価値の低いサービスの体質から抜け出せませんでした。そうした中、金融危機の影響で先進諸国の購買意欲が下がってきて、中国の輸出産業に大打撃を与えました。

 加えて、工場での製造時に二酸化炭素や有害物質を排出することで、大気汚染や水質汚染などの環境問題も取り立たされていました。

 政府もこれを意識していて、産業の構造改革が必要だと考えていました。構造改革の目玉は「メイド・イン・チャイナ」から「サービス・イン・チャイナ」への転換です。オフショア開発などハイテク産業の輸出であれば、環境汚染はほとんどなく高付加価値なサービスなので、国が全面的に支援しています。

――景気低迷により企業はコスト削減に躍起になっています。中国へのアウトソーシングサービスに対する日本企業のニーズに変化はありますか。

中山 大宇宙信息創造は、日本企業向けのオフショア開発および中国に進出する日系企業のサポートに力を入れています。金融危機の影響で顧客自身の売り上げが頭打ちになっていることもあり、昨年末から新規の受注は急激に減っています。支出の削減を最優先とし急ぎでないものは後回しにしている状況です。

 ただし、ITビジネス自体はコスト削減や生産性の向上、競争力アップにつながるものなので、顧客が一時的な心理的影響によってIT投資を止めることはありますが、長期的にはアウトソーシングを再評価するはずです。

 当社が強みとするのは、少ないコストで情報システムを開発、運用するサービスです。多くの企業が前年よりもIT予算を削っているため、前年と同じ業務水準でシステムを運用するには費用対効果を高めることが不可欠です。そのため、内製化ではなくアウトソーシングすべきという声が増えています。加えて、日本は米国と比べてオフショア開発ベンダーの活用が極めて少ないため、米国並みになれば市場規模が5倍、10倍にふくらみます。今は厳しい状況ですが、将来的にはチャンスが広がるでしょう。日本文化が浸透

――アウトソーシングサービスに関して、コストだけで考えるとインドやベトナム、タイといった地域の企業とも競合してきます。その中で中国、さらには大宇宙が選ばれる理由は何でしょうか。

中山 インドは欧米企業のアウトソーシング先として20年以上もビジネスに携わってきた歴史があり、ITの技術やマネジメントのレベル、会社の規模などでは世界でも群を抜いています。ただし、インド企業の実績は米国およびヨーロッパの顧客がほとんどで、文化や言葉、距離的な問題などから日本向けのビジネスはあまりうまくいっていません。

 ベトナムは数年前から注目されており、現時点では中国の半分以下のコストでサービスを提供できると聞いています。問題はアウトソーシング企業の絶対数とエンジニアの数が足りないことです。大規模システム開発の実績は少なく、中国より経験は浅いでしょう。大半の技術者は英語ベースで仕事するため言葉の壁もあります。

 中国はインドと比べて平均的に7、8割のコストでオフショア開発できるほか、日本と文化的な背景が近いことも利点でしょう。大宇宙の強みは、日本向けのビジネスだけに経営リソースを集中しているほか、日本資本が100%入っているため日本文化が隅々まで浸透している点です。日本語についてもしっかりとした教育体制を構築しているため問題ありません。

――社員は入社時点で既に日本語能力が高いのでしょうか。

中山 新卒採用の段階では日本語能力は問いません。事務職では日本の大学を卒業した人も一部いますが、技術者は技術力で採用しているため日本語が分からない人は少なくありません。

 ただし日本語ができないと仕事にならないので、内定から入社までの約1年間は社内研修などで日本語の学習を徹底します。入社までに日本語の国家試験3級以上のスキル習得を義務付けており、それ以下のレベルであれば内定取り消しもあります。

 入社後も日本語の専門教育を行います。プログラマーに関しては、最低限仕様書を読めれば仕事ができるため、日本語未経験の人でも半年程度で業務に入れるようになります。

――日系企業が中国人社員をマネジメントする上での難しさはありますか。

中山 日本は品質管理やサービスなどにおいて優れた面をたくさん持っています。しかし日本流のマネジメント方法をそのまま中国に持ち込んでも反発されます。日本では上司に「黙ってついて来い」と言われれば部下はついていきますが、中国ではそれが通じません。明確な目標や行動理由を示して、社員がこの仕事は自分のためになるのだ、頑張れば結果が出るのだと納得してはじめて一生懸命働いてくれるのです。

 意識の統一を図り社員を同じ方向に向かせるためには、日ごろから社員との交流は欠かせません。
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