2009-11-24

上海ディズニー…経済効果か文化侵略か

:::引用:::
 【上海=加藤隆則】中国政府が今月初めに建設を承認した上海ディズニーランド。

 中国では、来年5月開幕の上海万博に続く大型プロジェクトとして、内需拡大効果に期待が集まるが、米国文化を象徴するミッキーマウスによる「文化侵略」との批判も上がっている。

 上海市政府が今月4日に中国政府の建設承認を発表した翌日の上海各紙は、「ディズニー歓迎」報道一色だった。「経済波及効果は1兆元(約13兆円)以上」「5万人の雇用機会創出」など専門家試算が大きく伝えられた。ディズニー効果で、上海への旅行客が、年間300万~500万人増加すると見込まれるためだ。

 米ディズニー側は長年、中国本土市場進出を目指してきたとされるだけに、オバマ米大統領の訪中直前の承認発表は「(米側への)プレゼント」(中国メディア)と評されている。

 ◆開発に便乗◆

 建設予定地は、東アジアのハブ空港を目指す浦東国際空港、リニアや上海万博会場に近い「一等地」だ。予定地の浦東新区趙行村では「立ち退きで、生活が改善される」と歓迎ムードが広がっている。

 最後となる稲の刈り入れが一段落した同村で、来年にも始まる工事区域に組み込まれた喬史芳さん(58)は「(立ち退きで)一生かかっても手にできなかった都市戸籍がもらえる。これで安心して医者にもかかれる」と大喜びだ。農地を失った農民には、社会保障が不十分な農村戸籍に代わって、都市戸籍が与えられるからだ。

 また、農地収用に伴う立ち退き補償金の上積みを狙って、相次いで形ばかりのビニールハウスなどを設置する便乗行為が横行、地元当局は、「違法建築」として、解体を命じる騒ぎまで起きている。

 ◆過半数が「嫌い」◆

 一方で、中国本土初のディズニーランド建設に対して、「中国の民族文化衰退につながる」との批判もわき上がっている。「人民日報」発行の国際問題専門紙「環球時報」が実施したネット世論調査(3000人対象)では、「ディズニーに代表される米文化」に、過半数が「嫌い」と答えた。「米の文化侵略」と民族感情をあおる過激な言論もネット上で飛び交い、中華文化への自信増大のためか、「なぜ孫悟空のテーマパークではいけないのか?」との書き込みも。

 さらに、入園料が300元(約3900円)以上と予想され、所得格差拡大が社会問題化していることから、「裕福な家の子供だけが楽しみ、貧しい子供が傷つく『楽園』になる」と懸念する声も出ている。

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 ◆上海ディズニーランド=アジアでは東京、香港に次いで3か所目となる。2014年に開業見通し。初期の年間入園者数(推定)は約1000万人。敷地面積は400ヘクタール。総投資額は250億元(約3250億円)、中国側が57%、ディズニー側が43%を出資。日本の東京ディズニーリゾートは約200ヘクタール(ホテルなど含む)、ディズニーランドとディズニーシーの入園者数は計2722万人(2008年度)。
(2009年11月24日10時46分 読売新聞)
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