国防総省、アメリカ中央情報局(CIA)とともに国家情報戦略のコアといえる米国の国家情報会議(NIC:National Intelligence Council)が、2020年の世界予測シナリオを公表した。その大枠として以下の4つが提示されていた。
1. ダボス・ワールド
2. パックス・アメリカーナ
3. イスラム教文化
4. 脅威のサイクル
1つ目は、スイスに本部を置く世界経済フォーラムが開催する「ダボス会議」が有名である。経済のグローバル化の代名詞として、つとに有名になったこの傾向はさらに進むが、その副作用も発生する。
2つ目は、アジアやほかの新興勢力のパワーが米国一極体制を揺るがすというシナリオである。人口動態として老齢化とエネルギー需要増大もパワーバランスを変える要因になる。
3つ目については、西欧型民主主義に対抗した、イスラム教的なアイデンティティが打ち出され、西欧モデルの既存統治の仕組みが揺らぐシナリオである。
最後はテロリズムが国境を越えて浸透するというシナリオで、内部矛盾の拡大に乗じて、テロがまかり通り、国家や国民の安全が脅かされる。
それらの要因としては、中国が急速にパワーを持つようになった点、イスラム教国内での世俗主義と原理主義の対立、世界最強の軍事力を持つ米国がどのような姿勢で中国およびイスラム教世界に臨むかという点を挙げている。
報告書は上記のシナリオとその要因に加えて、下記の6項目もまとめている。
1. 2020年の世界は経済成長が続き、2000年と比較して世界経済は80%の増加。一人当たりの平均所得も約50%増加する。
2. 政治的組織を持つイスラムがグローバルに影響力を有していく。
3. 旧ソビエト連邦や東南アジアの国々では、民主化が部分的に逆行する。
4. 経済的、文化的、政治的な混乱が引続き発生する。中東と北東アジアで核兵器を有していない国が保有するかもしれない。
5. テロリストが生物病原体を獲得し、テロ行為をすることが懸念される。
6. 経済成長は続くものの不安要素は多く、未来は楽観できないようだ。その中でも米国の地位は2020年の時点で、経済、技術、政治、軍事の分野では優位を保っている。この見解は為政者にとって心地よい響きを持つものだろう。しかし、必ずしも手放しで喜べる訳ではない。
すなわち、米国の軍事力に太刀打ちできる国家は出ていないが、米国の軍事行動にダメージを与える国が増えていくと予測している。米国は環境と気候 変動、人権やプライバシー保護、クローン技術やバイオテクノロジー、国際機関の役割などをめぐって国際世論に立ち向かう機会が多くなる。それに伴い、報告 書は米国と世界が分断される可能性がある、と警告する。科学技術分野の総本山である米国科学財団(NSF)は2020年までの展望として、以下のことを挙げている。
1. NSFは最新の基礎科学およびトランスフォーマティブな研究の原動力となること。
2. すべての一般市民、特にマイノリティなどの階層から人材を発掘すること。
3. 初等中等教育において理科教育の新しい教育方法を試すこと。博物館や大学などと協力し新しい教育方法をさらに強化すること。
4. 優れた研究者に必要な研究機材を提供し、世界に通用する提案を促進すること。
以上のように、米国の将来像を国内の社会、国際の両面から予測した。米国は軍事力(核)、食料、通貨(ドル)、イノベーション(技術)の各分野に おいて国際的な基軸国家である。しかし、エネルギー(石油)などで必ずしも磐石な強さを持っておらず、EU、中国、インド、ロシアとの共存共栄を模索せざ るを得ないだろう。今回の国際的な金融危機で世界勢力図は変化していくので、米国の一極支配が終わるのは否定できないだろう。
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