2009-12-24

中国と貿易 責任自覚しルール順守を

:::引用:::
 映画や音楽、本などの流通が中国国内で不当に差別されているとして、米国が訴えていた通商紛争で、世界貿易機関(WTO)が米側の主張を全面的に認める最終報告をした。

 中国がWTOの最終審で敗訴したのは、自動車部品の関税をめぐる争いに続いて2度目である。

 両国の貿易は米国側の大幅な赤字が続き、摩擦が絶えない。中国側もこの9月、米政府がタイヤの関税を上乗せする緊急輸入制限(セーフガード)を決めたことに対してWTOに提訴している。

 昨年の世界不況をきっかけに、各国とも自国の産業や雇用を優先する保護主義の方向に傾きがちだ。ここは苦しくとも、貿易ルールを守ることが共存共栄の道につながる。とりわけ中国は不況のショックからいち早く立ち直り、世界経済の中で影響力を強めている。立場を自覚して、自由貿易の精神を尊重してほしい。

 WTOは貿易の障壁や差別的な扱いを取り除き、自由な取引を進める国際機関である。加盟国は自国の市場を他国に開放する一方、他国の市場に自由に参入し、貿易や投資を拡大できる。ルールの対象は、サービス貿易や知的財産権の保護にまで及んでいる。

 中国は2001年に加盟が認められた。加入により改革開放政策が促され、国営企業の整理や民営企業の自由化が進んだ。経済的には資本主義国と変わりないほどの変容ぶりである。

 しかし政府の姿勢には、まだ不十分な面が残る。一つは知的財産権の保護への対応が遅れていることだ。家電、ソフトウエアなど、たくさんの海賊版や模倣品が出回り、権利侵害が日常化している。

 違法行為を規制する法律が不備なことや企業の技術力の不足が指摘される。米国側のWTO提訴も、こうした事情が背景にある。

 中国政府の考え方にも、首をかしげたくなる点が少なくない。問題になっているのが、外国企業がITセキュリティー製品を輸出する際、技術情報の開示を義務付ける制度である。来年5月に導入する方針だが、日米欧の企業は、競争力を支える重要な情報が流出しないか心配し、反発している。

 中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、米国にとっては多額の国債を所有するスポンサーである。密接な関係になった以上は、互いの信頼を深めることが重要だ。中国にとっても、貿易ルールの軽視が自分の首を絞めることにつながりかねないことは、分かっているはずだ。
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