2009-12-24

産学連携 同床異夢  大学側就職口期待 研究費抑制企業側

:::引用:::
高い関心 成就まだ少数

 県内の中小企業と大学による産学連携のセミナーや紹介サービスが、にわかに盛り上がりを見せている。不況の影響もあって、大学を利用して研究開発費を抑えたい企業と、学生の就職口を期待する大学の思惑が合致した格好だ。ただ、連携が成就するのはなかなか容易ではない。
産学官金連携セミナーで大学側の担当者と話し合う来場者(右)(9日、大宮ソニックシティで)

 さいたま市内で9日に開かれた「産学官金連携セミナー」。埼玉りそな銀行の呼びかけで、県内10大学が自慢の教授陣をアピールするブースを設置、県内120社の役員らが参加するなど大盛況となった。

 坂戸市の女子栄養大のブースは、イトーヨーカドーと共同開発し、今年6月から来年2月まで全国規模で販売している和食型の栄養バランス重視弁当と野菜主体の低カロリー弁当を大きくPRした。

 きっかけは、東京都荒川区の仲介で昨年、イトーヨーカドー三ノ輪店と取り組んだ弁当の共同開発。店の売れ筋情報などを基に、短期大学部の岩間範子教授らが栄養学の立場から追究した「深川めし弁当」を作成。10品のおかずを添えた健康志向が受け、予想を上回る売れ行きとなり、全国販売の話が持ち上がった。ブースを訪れた桶川市の食品会社社長は「うちにも商品開発のアドバイスを」と同大の担当者に早速あいさつした。

 県などでつくる「産学連携支援センター埼玉」が企業から受けた相談件数は、2007年度は1256件、08年度は1274件だったが、09年度は上半期だけで944件と跳ね上がった。武蔵野銀行が10月、さいたま市の埼玉大と、埼玉りそな銀行も11月、上尾市の聖学院大と、取引先企業を大学に紹介する協定を結ぶなど連携はいまや常識といった様相すら呈している。

 「自前で研究設備をそろえるのは大変。大学をうまく利用し、“お墨付き”のようなものにもつながれば」と期待するのは、県内の資材加工会社の担当者。宮代町の日本工業大の担当者は「企業とのパイプが、就職の窓口にもなれば」と語る。

 ただ、問題は“顔つなぎ”のその後だ。埼玉りそな銀は、埼玉大に対して約260社の企業を紹介したが、共同研究に発展したのは30件ほど。経済団体の関係者は「企業側は、うまくいけばもうけもの、という程度。大学側にしても、教授は自分の研究に直接関係ない話を敬遠する傾向が強い」と指摘する。

 埼玉りそな銀の上條正仁社長は「まだお互いのことを知り合う段階。交流を積み上げ、大きな成果に結びつけば」と話している。
(2009年12月24日 読売新聞)
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