2009-09-28

製造業派遣禁止の民主政策に不安や疑問

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 民主党が衆院選でマニフェスト(政権公約)に盛り込み、長妻昭厚生労働相も記者会見で明言した「製造業への人材派遣の禁止」について、効果を疑問視する声が業界から上がっている。禁止される理由が明確でないうえ、雇用環境の改善につながることが期待できないためだ。「請負に戻るだけ」との指摘もあり、逆に雇用不安を招く恐れもある。

 「派遣禁止はスタートライン。正社員、パートも含めた雇用環境全体を考え直す機会にすべきだ」。大阪市の人材紹介会社社長、小瀬戸健一さんは、製造業派遣の禁止だけが一人歩きしないか、危機感を募らせている。

 同社は大手メーカーによる派遣社員の“雇い止め”が昨秋以降に相次ぐ前から、派遣業務から撤退。派遣労働の矛盾点について、小瀬戸さんは「日本経済が高度成長できたのは、雇用の安心感があったから。派遣は企業のご都合主義の面があるのに、労働者への補償制度がないのが問題」と指摘する。

 また、関西で食品スーパーや化粧品など販売業を中心に約800人を派遣している会社の社長は「対象が製造業ということで多少は楽観視している」とはいうものの、派遣禁止が全業種に及ばないか戦々恐々としているという。

 経済のグローバル化に伴い、国内のメーカーなどは人件費の安い途上国とのコスト競争を余儀なくされた。平成16年に「小泉改革」の一環で製造業派遣が解禁された結果、工場などの現場で派遣は必要不可欠な労働力となっている。 さまざまな業種で人材派遣が行われているなかで今回、製造業だけが取り上げられたのは、昨秋以降の“雇い止め”が社会問題になったため。ただ、長妻厚労相は法改正の考えは示したものの、詳細は未定だ。

 人材派遣大手のパソナグループは「外部人材を活用することなのか、労働条件なのか、何が問題で禁止されるのかが明確でない」と指摘。「派遣が請負に取って代わるだけで、雇用環境の改善にはつながらないのでは」と疑問を呈する。

 大阪大社会経済研究所の大竹文雄教授も「派遣の仕組みには良い面もあり、先進国の多くでは製造業派遣は認められている。禁止よりも、派遣労働者の雇用条件を改善することの方が必要ではないか」としている。

  ■請負と派遣 請負の場合、工場などの現場で作業を指揮するのは請負側の社員となる。派遣では派遣先企業が直接、派遣労働者を指揮できる。実質的には労働者の派遣を受けているのに、形式的には請負として労働基準法の適用を免れる大手メーカーの「偽装請負」が、平成18年ごろ社会問題となった。

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