2009-04-27

第7回アジアビジネス研究会 ベトナムシリーズ 開催後レポート

:::引用:::
4月8日、東京銀座にて、MBAネットワーク21の分科会「アジアビジネス研究会」主催による第7回アジアビジネス研究会(ベトナムシリーズ)が開催されました。



ベトナムというと、近年日本の大手製造業が相次いで進出し、中国のような製造拠点というイメージがあります。ベトナムにはこうした「中国に次ぐアジアの工場」としての位置づけの他に、国を挙げてソフトウェア立国を目指すという戦略も併せて推進しています。
その状況を、日本とベトナムでオフショアソフトウェア開発を手がけるRunSystem Corporation 取締役副社長・東京支店代表 Nguyen Tan Minh(グエン・タン・ミン)氏(※写真左)より、「ベトナムIT産業の状況と課題」と題してお話をいただきました。

また、ベトナムでは1人あたりの所得が急上昇しており、旺盛な消費意欲に裏付けられた内需を狙って、今後一層日系企業や欧米企業の進出が加速するものと思われます。
 進出にあたっての情報取得の注意点と、ベトナムのメディア、コンテンツ、広告事情について、ベトナムや中国などで内外の複数の企業の経営に参画されているB&Company株式会社 代表取締役社長 太田薫正氏(※写真右)より「急発展するベトナムのメディア・コンテンツ・広告」 ~ベトナムインテリジェンス・情報取得とメディアの活用~ と題してお話をいただきました。

「MBAネットワーク21」
慶應義塾大学、早稲田大学、青山学院大学、明治大学、産能大学、筑波大学、中央大学、立教大学、一橋大学など日本国内のビジネススクールの学生および卒業生(MBA)を中心とする交流会。会員同士の交流や研鑚を通じて、21世紀のビジネス界の発展に貢献しうる人材の育成を目指して2000年10月に発足。現在、ゲストを招いての講演会および交流会を定期的に開催している。会員数は約600名で、日本では最大規模のビジネススクールの学生・卒業生組織。
(公式ブログ)→ http://www.mba21.net

「アジアビジネス研究会」
「MBAネットワーク21」の分科会として2006年9月に発足。ビジネススクールの学生・卒業生(MBA)およびアジアからの留学生・卒業生を中心に、アジアビジネスに関心を持っている人々をネットワーキングし、アジアビジネス活性化のプラットフォームとなることを目指す。定期的にアジアビジネス研究会を主催するとともに、アジアビジネスに関係するイベントを共催し、アジアからの留学生の起業支援や日本企業のアジアビジネス支援などにも取り組む。

お問い合わせ
メール:mba_asia@yahoo.co.jp


ベトナムIT産業の状況と課題


オフショアソフトウェア開発を手がける、RunSystem Corporation 取締役副社長・東京支店代表 Nguyen Tan Minh(グエン・タン・ミン)氏より「ベトナムIT産業の状況と課題」というテーマでお話をいただきました。

ミン氏は1999年に国費留学生として来日し、2005年に東京工業大学在学中にRunSystem Corporationを設立し、取締役副社長就任。2007年同大学修士課程卒業後、同社東京支店代表に就任し、オフショア開発において日本側の窓口の役割を担っています。

(以下、編集部まとめ)
ベトナムIT産業の状況とオフショア開発拠点としての魅力
すでに多くで語られていることですが、ベトナムは30歳以下の人口が全人口の6割を占める若い人が多い国です。国民性としては、礼儀正しく勤勉であり、日本人と共通するところも多いと言われています。また、ベトナムへの投資実行額は日本の投資が一番多く、経済、貿易、政治の面で良好な関係を築いています。

IT産業は10年の歴史しかありませんが、年40%を超えるペースで成長する成長産業です。ベトナムには約900社のソフトウェア企業が存在し、この数、売上ともに年々増え続けています。ベトナムソフトウエア協会が発表したところによると、2002年に550百万USドルだったソフトウェアの売上は、 2006年に1,380百万USドルまでに達しています。
政府もIT産業に対して、税軽減、通信インフラ整備、教育支援などの様々な支援を積極的に行っています。

ベトナムにとって、日本はソフトウェア輸出の50%を占める重要な市場です。今後も、より一層日本市場に力を入れ、2020年までに日本のオフショア開発市場の10%の獲得を目指しています。
こうした様々な要因を背景として、年々ベトナムでソフトウェア開発を行う日系企業は増えており、日立ソフト、NECソフトなどの日本の大手ソフトウェア会社も相次いでベトナムに進出しています。


オフショア開発の利点と問題点
オフショア開発の利点としてはまず、コストの削減が挙げられるでしょう。ベトナムにおけるソフトウェア技術者1人あたりの金額は中国の同等の技術者と比較して約3割安い水準です。その他にも、技術者が不足している問題への解消、特に自社の知識を持った技術者の確保・育成できることも利点の一つといえるでしょう。

問題点としては、人材や経験がまだ不足していることがあります。また、ベトナムのソフトウェア会社は、中小規模の会社が多いために大規模の案件を受注するのが難しいことが挙げられます。仕様の伝達やコミュニケーションをより改善していくことも重要です。

こうした問題に対応するために、政府レベルではインターネットの通信回線や電力状況の改善といったインフラ整備を積極的に行っています。さらに、日本語で学ぶIT系大学を設立し、JITECなどの国外の資格制度を積極的に取り入れるなど、教育・研修の充実にも力を入れています。

各企業のレベルにおいても、日本の大手企業と連携してOJTを行ったり、各企業で日本語研修を設けたりと教育に力を入れています。また、CMMIやISOなどの国際認証の取得を進め、開発プロセス管理や品質管理の向上に力を入れています。


今後のベトナムのIT産業の課題
最後に、今後のベトナムのIT産業の課題について整理します。
まず、増加するニーズに応えていくために技術者の数をもっと増やしていく必要があることが挙げられます。また、高度な業務知識を得ることや、より上流工程の仕事ができるようにすることなどの技術力の強化も必要でしょう。その他にも、大規模案件に対応できるプロジェクトマネジャーの育成や、開発管理ツールの導入も今後の課題として考えていかなくてはなりません。

RunSystem Corporation について
2005年に設立され、多くの日本企業との取引実績を持つ。社員100人、日本駐在人員10人を抱え、ベトナムでTOP30に入るオフショアソフトウェア開発会社。
日本留学経験者を中心に構成され、日本語、日本文化への理解が深い。また、多くの数学コンテスト、プログラミングコンテストにおいて受賞実績を持っている。
 会社案内(PDF 3.45MB)
(http://runsystem.net/profile/Profile_RS2008.pdf)

東京支店代表 Nguyen Tan Minh(ミン) minh@runsystem.net
東京都渋谷区神宮前2-2-22 青山熊野神社ビル5F  Tel: 03-5770-4027

RunSystem Corporation本社
info@runsystem.net
355 Doi Can,Ba Dinh, Hanoi Tel: (+84)-4-3772-4304 /Fax:(+84)-4-3772-5204



「急発展するベトナムのメディア・コンテンツ・広告」
~ベトナムインテリジェンス・情報取得とメディアの活用~


経営コンサルティング、リサーチ、海外関連事業を手がけるB&Company株式会社 代表取締役社長 太田薫正氏より、市場開放・内需の拡大を背景に急速に発展しているベトナムへの進出にあたっての情報取得の注意点と、メディア、コンテンツ業界、広告業界の状況についてお話いただきました。

太田氏は、外資系コンサルティング会社、ベンチャー企業役員を経てB&Company株式会社を設立。経営コンサルティング、企業投資を広く実施し、ベトナムP&T Group副社長(情報・コンテンツ・広告)、上海Kyusei & Buoyancy 取締役(マーケットリサーチ、マーケティングプロモーション)その他内外の複数の企業の経営に参画されています。


(以下、編集部まとめ)
市場としてのベトナム
ベトナムは1人あたりGDPが10年間で2.3倍(相乗平均=CAGRにして年平均8.9%)、5年間で1.9倍(同 年平均13.7%)の急速な成長を遂げています。また、1人あたりGDPが1,000USドルを超えようとしており、この1,000USドルのラインを突破すると、さらに長期的な成長が期待できることが、日本、韓国、シンガポール、タイなどの各国の経験則から分かっています。

 そのような中、日系企業も多くがベトナムに進出していますが、そのほとんどが製造拠点を目的とした進出であり、内需を目的とした日系企業の進出は非常に少ない状況です。
また一方で、ベトナムならではの、多くの留意すべき点、対応すべき点も存在します。さらに、進出すべきタイミングの評価や事業化の体制などの準備段階での計画作りも、事業の成功を左右する要因といえるでしょう。


情報の取得
進出にあたっては、市場規模や成長率、各社のシェア、ユーザー分布やビヘイビアなど様々な情報を取得した上で、分析、判断をすることになるのだろうと思われますが、当然、取得する情報の精度によって、分析や判断の精度にも影響が出てきます。
今では新聞、ネット、雑誌など様々な媒体から情報を取得することができますが、当然これらの情報は、一次情報に遡ってチェックを行う必要があるでしょう。
しかし、出所や定義が不明なことや、曖昧な情報も多く存在します。また、例えば総論の情報はあっても業界、企業ごとの具体的かつ定量的な情報が整備されていないことも多くあります。このような状況では、新聞記事などの情報から本当に使える情報まで深堀りしようとしてもデータが行き止まりになってしまうこともあります。
このように、本当に役立つ情報が不足している状況の中では、いかにネットワークの中で、キーパーソンを探し出し、情報を取得することが有効な方法であるといえるでしょう。


メディアを活用した情報の発信
メディアはすべて政府の管理下にあるという基本前提はあるものの、所得が増えたベトナムの人たちの旺盛な消費需要を狙って、TVのチャネル数、雑誌数などのメディアは急速に拡大しており、それに比例して広告市場も急拡大しています。
ベトナム・アドバタイジング・ユニオンの発表では、2003年で7.3億ドルであった広告・メディア事業の売上は、2007年には17億ドルへと拡大しました。
広告媒体も発展しており、新聞の広告からエレベータの中での広告まで主要な媒体は出尽くしている感があります。テレビ番組もクイズ番組から外国のドラマまで充実しており、CMも多く放映されています。
広告やテレビCMの価格水準は日系や欧米系の企業からするとリーズナブルであるため、大部分の広告は外国の会社によって占められています。広告される商品は、日常的に使用する消費財や薬品、家電、バイク、車などがほとんどです。
今のうちから認知度を高めておき、かつ日本や欧米に比べて安価なコストでベトナムでのメジャーブランドに育てていくことを狙っているのでしょう。“ベトナムでのメジャーブランド”というブランドはいくつか存在しており、まだまだそのチャンスはありそうです。


B&Company株式会社 について
国内での経営コンサルティングとアジアコンテンツ事業を2本柱として実施。コンサルティングでは大手上場企業、業界トップ企業、政令指定都市、政府外郭団体などを顧客に持つ。海外ではアジアでのリサーチを実施するほか、特にベトナムに注力し、投資、メディア、コンテンツ、リサーチなどを事業展開。内外に投資先および提携会社多数。

(会社案内)
→http://b-company.jp/company/profile.html

お問い合わせ
電話 : 03-5148-7980   メール : info@b-company.jp
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