2009-04-22

塾も対策に熱、高まる倍率 広がる公立の中高一貫教育

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 全国に広がる公立の中高一貫校。本来は一部の私立のような大学進学シフトではなく、カリキュラムにゆとりを持たせるためにつくられたのだが、有名大学への合格者を伸ばす学校も出ている。人気校ともなると小6の入学選抜の競争倍率は10倍以上に跳ね上がり、塾の入試対策が熱を帯びる。

■国立大へ現役合格増

 滋賀県立守山高校(守山市)は03年に中学校を併設。今年、中学から入学した生徒が初めて大学を受験した。

 京都大学の合格実績は、過去5年間で浪人経験者の2人だけだったが、今春は現役で3人が合格。前年は合格者がいなかった滋賀医科大医学科にも3人が合格した。いずれも中学から入学した生徒だ。

 同高は、英語、理数での発展的な学習や、「人間探究学」と名付けた総合的な学習を中高通じて実施している。進路担当の堀浩司教諭は「高校入試がないのでじっくりと基礎学力が固められる。『人間探究学』で将来について考え、受験の動機づけがしっかりできた」と言う。

 02年に中学を併設した岡山県立岡山操山高校(岡山市)も、「中高一貫一期生」が卒業した昨春、東大に4人が合格した。それまでは5年間で1人。今年も東大に4人が現役合格し、旧帝大など入試が難しいとされる国立大学にも31人が現役で合格した。三浦隆志教諭は「互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、全体の学力が高まる。高校からの入学者にも良い効果をもたらす」。「学力だけでなく豊かな人間性もはぐくむ」というのも教育方針だ。

 99年から設立が認められた公立の中高一貫校だが、必ずしも成功した事例だけではない。香川県では10年度末で閉校になる中学もある。大手進学塾の関係者は「母体となる高校が『ブランド校』かどうかで明暗が分かれている。過疎地に生徒を集めるためのような学校だと厳しい」と指摘する。

 04年度以降に中高一貫化し、中学からの入学者がまだ卒業していない高校には、千葉、小石川(東京)、洛北(京都)、宮崎西など、伝統校や進学校が目立つ。

■新しい受験層が誕生

 しかし、人気校に入るのは簡単でない。「適性検査」と呼ばれる、論理的な思考力や記述力をみる教科横断的な問題を突破しなければならない。複数の表やグラフを見比べて傾向を導き出したり、長文を読んで内容をつかんだ上で感想の作文などを書いたりする。難しい計算や膨大な暗記が求められる一部の私立中学の受験とは異なるが、それでも「小学校の勉強だけでは厳しい。訓練は欠かせない」というのが各学習塾の共通した見方だ。

 大手進学塾・栄光ゼミナール(東京)は都内の100以上の教室に公立中高一貫対策コースを設ける。授業の半分は基礎学力、残りは論理力や記述力を磨く適性検査対策にあてる。作文をたくさん書く、過去の出題例をテーマに討論するといった内容で、担当者は「とにかく考える習慣をつけてもらうようにする」と話す。

 塾関係者には、都立の一貫校の選抜問題について「考える力がつく」「対策の勉強をすれば合格できなくても無駄にはならない」と評価する向きもある。しかし、それも一様ではなく、塾側が「私立入試のような知識重視型だ」と指摘する出題も少なくない。

 栄光ゼミナールの今年の推計では、首都圏の1都3県で私立や国立の中学を受験した小6生は約5万人。一方、中高一貫型の公立中学を受験した子も約1万6千人いる。公立受験者の2割程度が私立や国立の併願者とみられるという。担当者は「私立を目指す熱心な層と、地元の公立中学で良いという層。その間に、公立一貫校の中学を目指す新しい受験者層が生まれた」と分析する。(宮本茂頼)

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