2009-04-23

東京棄民 漂う高齢者 賃貸型施設 『下宿』支え、厳しい経営

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無届けの老人施設「静養ホームたまゆら」の火災は、「有料老人ホーム」に入居できない低所得高齢者の住まい不足を浮き彫りにした。そんな中、要介護度が低く自立生活ができる高齢者を、受け入れる試みも始まっている。 (飯田克志)

 「アパートでずっと独り暮らしで心細かった。ここは友だちがいて楽しい」

 埼玉県川口市の低所得者向け施設で暮らす八十三歳の女性に笑顔が浮かぶ。同施設は医療法人が母体のNPO法人「全国福祉会」(さいたま市)が運営する「賃貸住宅」だ。加藤剛理事長は「学生寮のような寄宿舎で、有料老人ホームではない」と説明する。

 入居費は約九平方メートルの居室で室料(月四万七千七百円)、管理費、光熱費を合わせ約八万円。礼金は九万五千四百円。管理人二人が同居する。食事は自炊もできるが、大半の入居者は主に給食業者が用意したものを食べている。食費は同三万円。トイレや風呂は共同で、談話室もある。

 同会は二〇〇五年から事業を開始。現在、川口、さいたま、川越の三市に計九カ所あり、高齢者を中心にDV被害女性ら約二百人が暮らす。東京都、千葉県など埼玉県外からも入居。自治体が仲介したケースもあり、八割以上が生活保護受給者という。

 介護サービス利用者も多い。認知症の進行などで手厚い介護が必要になった場合は、グループホームなどに移ってもらうという。

 入居対象を自立生活ができる人にすることで、経費を抑える運営がこうした施設では多い。だが、運営は苦しい。加藤理事長は「収入が少なく、職員配置やスプリンクラーの設置は難しい。入居者の満足度は低いかもしれない」と有料老人ホームとの差を認める。

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 少人数で支え合いながら生活するグループホームに近い「賃貸住宅」もある。さいたま市(当時・浦和市)に一九九〇年開所した「グループハウスさくら」は、オーナー小川志津子さんが母親の介護をきっかけに、自宅を「下宿」に改築した。入居費は月十万円。

 二〇〇〇年に東京都八王子市に開設された「グループハウスゆう」も「さくら」と同様の施設だ。当初、月約八万円で賃貸。自炊が基本で、茶会などイベントも開催していた。運営するNPO法人「ハウスゆう」の土屋清理事長は「ヘルパーを雇用すると費用が高くなる」と、見守り役として一緒に生活する。

 賃貸形式の施設は低所得者からは一定の評価を得ているが、新たな課題が出ている。入居者の高齢化が進み、さらなるケアが必要になっていることだ。

 「さくら」の入居者は当初、自炊し、旅行にも出掛けていた。最近は自炊が難しくなり、配食サービスなどを利用するようになり、入居費も月一万五千円上げた。小川さんが運営する別施設では、夜間の職員配置など介護態勢を強化、有料老人ホームにしたが、入居費を同十七万円ほどに上げざるを得なかった。

 「二十年経つと元気だった人も健康に問題が出てくる。善意だけでは続けられない」と打ち明ける。

 「ハウスゆう」は、入居後に認知症が現れ、生活が困難になるケースが相次ぎ、活動を縮小した。安全面から一時は入居を断ったこともある。土屋理事長は「人材が確保できれば受け入れたいが、私たちがいくら頑張ってもできない。助成とか行政にできることがあるはず」と訴える。

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