2009-04-10

「観光庁」出足不調、不況と円高で外国人客大幅減

:::引用:::
「観光立国」の旗振り役を担い、昨年10月に国土交通省の外局として観光庁が発足して半年。

 来日する外国人旅行者を大幅に増やすなどの目標を掲げてPRに懸命だが、世界同時不況の直撃を受け、大幅増どころか大幅減の苦しいスタートとなった。小所帯の新参官庁ゆえの知名度不足に泣く場面も。それでも「観光で景気回復を」と巻き返しを狙っている。

 ◆4割減◆

 3月末、独立行政法人・国際観光振興機構が2月の来日外国人旅行者数が40万8800人で、前年同月比41・3%減だったと発表すると、観光庁に衝撃が走った。「この半年は強烈な逆風だった」と本保芳明・観光庁長官は顔をしかめる。

 「100年に1度」と言われる金融不況と円高のあおりで、来日外国人旅行者数は2月まで4か月連続で前年同月比2ケタのダウン。2010年に「年間1000万人」という目標を掲げるが、08年は835万人にとどまり、目標達成に早くも黄信号がともっている。

 来日外国人旅行者や日本人の海外旅行者数など、同庁が掲げる5項目の目標はいずれも達成が厳しい状況。本保長官は「このままでは1勝もできないかも。組織をもっと筋肉質に鍛えなくては」とねじを巻く。

 ◆知名度不足◆

 観光庁の存在感も薄い。発足直後の昨年10月下旬に内閣府が行った調査によると、同庁の「名前も内容も知っている」と答えた人はわずか1割。同庁職員が国交省の出先機関に「観光庁です」と電話をかけると、「官公庁?」と問い返されることもあるという。

 自治体や観光業者などから観光庁が受けた相談も昨年10月~今年3月の半年間で59件にとどまった。

 同庁は、発足時の目玉施策として「観光圏」構想を掲げた。近接の観光地が連携し、観光客に2泊3日以上滞在してもらおうというもので、圏内のイベントや観光商品開発などに補助金を出す制度もある。しかし、08年度中の申請は、約2億5000万円の枠に対し2億円弱止まりだ。

 ◆掘り起こし◆

 地道な取り組みによる成果の兆しもある。同庁は、日本招致を目指すイベントとして、約5000人の法曹関係者が集まる「国際法曹協会」(本部・ロンドン)の2014年総会にターゲットを定めた。ライバルは豪州だったが、投票権を持つ理事を狙って日本の本腰ぶりをアピール。麻生首相をはじめ、韓国などの弁護士団体からも推薦状をかき集め、今年2月、理事の投票の結果、大差で初の日本開催をもぎ取った。

 3月には「経営によく効く『休暇』を考える」とするシンポジウムを開催。有給休暇取得率の高い製菓会社で作業効率がアップした例などを紹介した。同庁幹部は「本省の0・1%の予算だが、観光には地域に力を与える持続的効果があり、長い目で見た経済への貢献は大きい」と意気込む。

 同庁の「有識者委員会」メンバーでもある東レ経営研究所の佐々木常夫社長(64)は「情報を持ちながら、政策につなげられていない。世界にもまれて伸びた製造業のように、旅行業界が切磋琢磨(せっさたくま)する体質になるよう観光庁が先導役を果たすべきだ」と辛口のエールを送っている。

 ◆観光庁=国交省の本省から観光政策課など6課が移行した。職員数は117人。日本の観光地の海外向けPRや自治体へのアドバイス、観光業者の支援などを手がける。
(2009年4月10日16時12分 読売新聞)
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