貴重な日系人材:人材ビジネスが仲介
就職氷河期のUターン、団塊世代の夢実現-本間俊典(経済ジャーナリスト)
前回は中国における人材ビジネスに参入している日系企業の動向を紹介した。しかし、実態は単純ではない。日本→中国、中国→日本など、両国にまたがる「グローバル人材」の活躍の場が広がっている。
中堅の人材紹介・派遣会社のジェイエイシージャパンは、海外グループ企業との提携による国際ネットワークを通じて、海外の日系企業などへの人的サポートを強化している。
2006年から、アジアで働く日本人を中心に、国内企業に転職する支援事業を本格化させている。すでに150人が転職しており、そのうち35人はアジアにいた若手で、就職氷河期に日本を脱出して海外に活路を求めた人もいる。
同社は07年1月、外資系企業に対する人材紹介の専門部署「国際事業部」を設置。日本、中国・台湾など12カ国・地域出身のコンサルタントら30人を配置している。5月からはバイリンガルに特化した英語の転職情報サイトを開設し、外資系企業の求人情報や転職セミナー情報などを提供している。一方、中国、タイ、マレーシアなどアジア5拠点で、年間30回程度の現地説明会を開き、日本人の登録者を募っている。
こうしたビジネスが成立する背景には、日系企業のアジア進出が恒常化しているのと、日本の労働力不足の本格化がある。戦後、普通に見られた海外駐在員が数年、現地に赴任して現地スタッフを使い、また日本の本社に戻るというパターンは、すでに崩れている。現地のビジネスを円滑に進めるには、それでは不十分だからだ。
しかし、日本の人材ビジネスの場合、海外企業への人材紹介は給与水準の違いなどからまだ本格化していない。今後、政府間協定によって人的往来が保障されれば、ビッグビジネスに発展する余地は大いにあるだけに注目される。
■新天地でもう一旗
一方、アヴァンティスタッフは「07年問題」で退職した団塊の世代の持つ高度な技術力は中国でも生かせるとして、06年末以降、ITや電子機器などの中国企業や日系企業に、60歳前後の高度技術者数10人を紹介し、就労に成功している。
同社は40-50代の管理職など、高度人材案件に強く、中国で不足している管理部門の幹部クラスのニーズがあるとみて、当分の間、団塊世代の取り込みを強化する考えだ。
この世代は、日本のサラリーマン社会の酸いも甘いもかみ分けた世代であり、社会貢献に対する意識も非常に高い。これまでの企業社会の制約から解放され、新天地で自分の培ったノウハウを「伝授」することに意欲的な人々が多く、人材ビジネス会社の仲介によって夢が実現するケースも徐々に増えているのである。
日中関係の改善には、こうした人的交流が最も効果的ではないだろうか。イメージだけでツノ突き合わせることがいかにナンセンスかわかる。
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中国での人材確保
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