2007-07-10

残留孤児支援 『帰ってよかった』国に の記事

:::引用:::

残留孤児支援 『帰ってよかった』国に 

中国残留孤児訴訟の原告団が、給付金の支給など国の新たな支援策を受け入れた。大きな区切りだが、これで終わりにしてはならない。今後も生活相談などの継続的な支援が必要である。

 現行の支援策は生活保護中心で、就労収入などがない一人暮らしの孤児の場合、医療や住宅費とは別に最大八万円の保護費を支給し、国民年金を受給していれば、その分を差し引いていた。

 新しい支援策は孤児全員に国民年金を満額の六万六千円、さらに生活保護費に代わる特別給付金を最大八万円支給する。

 孤児の救済については十五地裁で国家賠償請求訴訟が起こされた。八地裁で判決が出され、国が早期に帰国させる責務を認めながらも孤児側の勝訴は昨 年十二月の神戸地裁判決だけだった。それだけに孤児側には政治解決を求める声が強く、安倍晋三首相も一月に、訴訟とは別に夏までに解決するよう指示してい た。

 最終的に合意したとはいえ、孤児側が完全に満足しているわけではない。新支援策が給付額を大幅に増やしたとはいえ、あくまで生活保護の延長であり、一定の収入があれば給付額から差し引く「収入認定」の考えを踏襲している点だ。

 厚生年金や就労収入の三割を収入認定対象から外す優遇措置がとられた。残りについても孤児側が生活保護扱いを最も「尊厳を踏みにじる」と反対していた心情を酌み取った運用を心掛けてもらいたい。

 同時に忘れてならないのは、給付金などの支給でこの問題がすべて解決するのではないということだ。

 日中国交正常化以後に国費で帰国した残留孤児らは約六千三百人で、平均年齢は七十一歳。そのうち六割が生活保護を受けている。日本語の日常会話で不便を感じない孤児は四割にも満たない。このため帰国後に就労が思うようにできず、七十歳以上では六割に就労経験がない。

 孤児が置かれた特殊な状況に配慮し、これまで以上に帰国後の日本語や生活習慣の指導、就労相談体制を拡充する必要がある。孤児の中には日本語が理解できないため自宅に引きこもるケースが少なくない。そうした孤児への巡回相談の機会も増やすべきである。

 老後の不安を抱える孤児の中には孤児専用の老人ホーム建設を求める声も出ている。検討してはどうか。

 孤児が訴訟を通じて強く求めていたのは「人間の尊厳の回復」だった。行政の対応だけではなく、われわれ国民も社会に受け入れ、孤児が「帰国してよかった」と思えるようにしたい。


●●コメント●●
孤児全員に国民年金満額六万六千円、生活保護費に代わる特別給付金を最大八万円支給とのことで待遇が変わったが、せっかく日本に戻ってきたにもかかわらず、日本語の問題、就職の問題はまだまだ課題として残っているとの事

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