介護や看護の技術を日本で学んで働きたい。そんなインドネシアの人たち二百人余りが今月、日本にやってきた。経済連携協定(EPA)による本格的な受け入れだが、介護現場などで将来、実際に手助けしてもらうまでには、かなり険しい道のりがありそうだ。
協定では、二年間で合わせて千人を受け入れることになっている。第一陣の今年の希望者は、当初予定していた五百人の枠を大幅に下回った。日本語で 受ける国家試験に、介護福祉士希望の場合は来日から四年、看護師コースでも三年以内に合格しなければ母国に戻されてしまう。語学の壁に加えて、資格取得の 厳しい条件が二の足を踏ませたのだろう。
生活習慣の違いもある。来日した男女二百五人は今、東京や大阪などに分かれ、半年間の研修に入っている。福祉施設や医療機関で働きながら、専門知 識や技術などの実習に入るのは来年一、二月以降になる。広島県内でも老人福祉施設など二施設で計三人を受け入れる。イスラム教徒が多く、食生活も日本とは 随分異なる。きめ細かい配慮が欠かせない。
全員が母国の看護師資格を持ち、大学卒業者もいる。だが、慣れない環境での仕事と勉強の両立はきわめてハードなものとなろう。介護士の試験も日本 語で専門用語が並び、日本人の受験者でも半数程度が不合格という。それでも来日を希望した理由は、母国で働くよりも十倍近い収入が見込まれ、日本の高度な 介護技術を習得できる点も魅力に映ったようだ。
来年以降はフィリピンからも介護の働き手がやってくる。ベトナムやタイも対応を注視している。スムーズな受け入れに向け、資格取得期間の上限緩和などの見直しも考えなければなるまい。
これまで日本では、外国人労働者の受け入れは弁護士や研究者など高度な専門分野の人材に限られてきた。単純労働を認めると、国内雇用への影響が大きいからだ。厚生労働省も今回、EPAでの決定に従った国際的な人材交流の一環として、例外的に受け入れたとの姿勢だ。
ただ、現在百万人余りの介護職員は、高齢化の進展で二〇一四年までにさらに四十万―五十万人が必要になる―との厚労省試算がある。このギャップをどう埋めていけばいいだろうか。外国からの労働者受け入れも、中・長期的な視点で考えなければならない。
もちろん外国の労働力に安易に依存することは避けたい。日本人の賃金が切り下げられたり、不況時に雇用を奪われたりする恐れもあるからだ。質の低下を招くようでは逆効果にもなる。
夜勤が多く、長時間労働、低賃金…。若者たちを中心に離職が相次ぎ、離職率20%は他産業と比べてかなり突出している。介護現場の悩みは深刻だ。 働く人の待遇や職場環境の改善に取り組むことの方が先決だろう。外国人労働者に敬遠されるようなことがないよう、何より働きがいのある職場づくりに努めた い。
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