世界最多の金メダルを獲得した中国では、初の五輪開催を無事終えたことで達成感が漂い、愛国心と民族主義が高揚しているようだ。
だが、熱戦が繰り広げられている最中にも、ウイグル族やチベット族などの少数民族への弾圧は
伝えられた数々の「偽装」の中でも、開会式での民族融和の演出は異質だった。民族衣装に身を包んだ中国内の全56民族の子供たちが中国国旗を運んだ場面で、大半は漢族の児童だった。
中国当局者たちが、いかに自国の少数民族を軽んじ、信用していないかを示すものだ。
口パク、偽装花火などを含め、多くの演出が、党中央の指導で決められていたことも判明した。北京五輪は中国共産党指導部が前面に乗り出した政治の祭典そのものだったことを物語っている。
選手育成や資金投入など、国家丸抱えによる金メダル至上主義は、成果を上げたかもしれない。しかし、開会式での偽装は、全体主義国で五輪を開催する難しさを露呈した。
オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」でフェアプレーの精神を規定している。偽装演出は、この精神にもとるものだ。
海外メディアへの取材妨害も目立った。新疆や北京などで、邦人記者や欧米記者が治安当局者から手荒な扱いを受け、中国政府は謝罪よりも、言い訳や警察側の行為を正当化することに腐心した。
人権弾圧や報道規制などは、中国側が国際オリンピック委員会(IOC)に対して行った誓約に違反している。
中国は今年後半の経済政策の重点を、インフレの抑制と景気の下支えに置いた。五輪終了で、経済が一気に減速することを懸念しているのだろう。
今後は、物価と景気を両にらみするという、極めて難しい
都市部の不動産価格は年初から25%余りも下落、上海株式市場の株価指数はピークだった昨秋の約3分の1に下落してしまった。
都市や農村での強制土地収用や、党幹部の腐敗・横暴などへの住民の抗議は続いている。
共産党政権の正統性のよりどころである「経済発展」が担保できなければ、人心は離反し、社会不安は一層強まる。
五輪で高まったナショナリズムと、困難な経済運営は、中国指導部にとって大きな試練となる。
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