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■言葉、宗教、文化…壁高く
人手不足に悩む介護や医療の現場に、外国人労働力が初めて加わる。インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき7日、介護福祉士、看護師の候補者205人が来日した。老人ホームや病院など受け入れ施設も手探り状態の中、慌ただしく「開国」を迎えた。
▽先進国経験に意欲
来日を目前にした6日、ジャカルタの日本大使公邸で開かれた壮行会。介護福祉士候補者の一人で、大学の看護学部を卒業したばかりのシンディ・フトゥベシ さん(23)は「技術水準が高い日本で経験を積むことができ、うれしい」と目を輝かせた。「知識を最大限吸収したい」と意欲的だ。
今回の受け入れは(1)日本人職員と同等の給与を保証(2)介護職で4年、看護職で3年以内に日本の国家試験に合格すれば就労続行が可能-とした点が特徴。「出稼ぎ」「安価な労働力」ではないという建前だ。
だが、大半の候補者は日本語をこれから半年間の研修で初めて学ぶ。言葉の壁の克服が最初の難関となる。日本の国家試験突破も困難とみられ、多くの候補者が資格取得にこだわらず数年での帰国を前提としている。
文化の違いも大きい。大半がイスラム教徒で毎日の礼拝が欠かせないほか、豚肉は禁止。ジルバブ(スカーフ)姿の女性も多い。看護師候補のディアン・エカプトリさん(28)は「日本では手術着の帽子に似たジルバブを着け、できるだけ違和感がないようにしたい」と話す。
▽海外人材への期待
国内の受け入れ施設はこうした「文化摩擦」も念頭に、準備に大わらわだ。
介護福祉士候補の男性2人を受け入れる千葉県袖ケ浦市の老人保健施設カトレアンホーム。イスラム教徒である2人に配慮して礼拝のスペースを設けたほか、インドネシア語の日常会話集を職員に用意した。
当初は反対する職員もいた。「イスラム教徒は何度もお祈りの時間が必要だし、テロのイメージがある」「経営上のメリットが少ない」
それでも受け入れに踏み切った理由について矢田洋三理事長は「少子高齢化が進めば、海外の人材はぜひ必要。成果が出るのは10年後かもしれないが、今やらないと人手不足は深刻な状況になる」と話す。
日本国内の介護労働者は介護保険制度導入の2000年の約55万人から、06年に約117万人と倍増。それでも高齢化の進展で、14年には 140万~160万人が必要と厚生労働省は見込む。だが介護現場では離職率が21・6%と全産業平均を5ポイントも上回り、恒常的な人手不足だ。
約2億3000万人と世界第4位の人口を抱えながら失業問題が解決できないインドネシアは、外貨獲得の狙いからEPAでの候補者派遣を決めた。両国の思惑が一致し、今回の受け入れに至った側面もある。
▽国際的に注目
人手不足解消の面だけにとらわれるのでなく、受け入れ態勢の充実を求める意見も根強い。
現地の看護学生らをインタビュー調査した九州大学大学院の平野裕子准教授(保健学)は「来日希望の理由として『現地の約10倍の給料が魅力的』という回答と同じぐらい『高度な医療技術を学び、本国での仕事に生かしたい』との意見があった」と結果を紹介。
「国家試験に1人も受からないようでは、外交問題に発展しかねない。国際的にも注目を集めているモデルケースであることを意識して慎重な対応を」と話して いる。
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