2008-08-18

外国人労働者をどう活用する!?

:::引用:::

研修・技能実習制度について (1)

 福岡でも、あらゆる場面で外国人が働いている姿を目にするようになりました。地域や職場に溶け込み、熱心に働くその様子は、福岡がコスモポリタ ン・シティであることを実感させてくれます。ところで彼らは、どのようなカテゴリーで労働しているのでしょうか。今回は、外国人の労働力を考えるうえで重 要な制度、「研修・技能実習制度」について話を進めます。この2つの制度についての区別や認知度は、まだ高くないようです。

 まず、入国管理局の見解を見てみましょう。入国管理局は、「研修・技能実習の趣旨」を「人づくり支援による国際貢献」として、次のように説明しています。

 <我が国の研修・技能実習制度は、開発途上にある国々に対して技術・技能を移転することを目的とし、我が国に研修生を招いて技術移転による人材育 成を行い、それらの国々の発展を支援するという、長く広くその効果が浸透していく国際協力・国際貢献です。 (中略)つまり、ひとつの企業での研修生・技能実習生の受入れが、実は我が国の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担っているのです。> (入国管理局HP より一部抜粋)

 「研修」は、昭和40年ごろから始まった制度です。海外進出した日本企業が現地法人などの社員を日本に招聘し、技術や技能を修得させた後、現地企 業に戻します。研修を修了した社員は、修得した技術などを活かし、現地企業でリーダー的存在として活躍することになります。法的な整備も進められ、 1990年にはこれまで外国人研修生の受け入れが困難であった中小企業にも門戸が拡がりました。結果、開発途上国のニーズに合った、汎用性の高い技術など の移転につながっています。

 一方、「技能実習」については、93年に「技能実習制度」が創設されました。研修活動により一定水準以上の技術などを修得した外国人に適用されま す。該当する外国人は研修終了後、研修先企業などと雇用契約を結び、技術を実践で活かすことが可能です。現在は、この制度を活用できる職種が増えていま す。

 では、「研修」と「技能実習」の違いをまとめてみましょう(表を参照)。
 「出入国管理及び難民認定法」では、外国人が日本に在留する法的地位としての「在留資格」が、27種定められています。そのなかで、「研修」は、在留資 格が「研修」(※1)、「技能実習」(※2)は、在留資格が「特定活動」です。この2つは在留資格が異なるので、活動可能な範囲も異なります。研修生は就 労が禁じられている一方、技能実習生は、より実践的に技術・技能等の習熟を図るために、就労が認められています。技術・技能力に長けた外国人を、労働力と して合法的に導入できるうえ、国際貢献にもつながります。企業にとっても、日本にとってもメリットの多い存在、それが技能実習生なのです。


 「研修」と「特定活動」の定義(出入国管理及び難民認定法より一部抜粋)


※1 研修:本邦の公私の機関により受け入れられて行なう技術、技能又は知識の修得をする活動。
※2 特定活動:法務大臣が個々の外国人について次のイからニまでのいずれかに該当するものとして特に指定する活動。
イ 本邦の公私の機関との契約に基づいて当該機関の施設において当該特定の分野に関する研究、研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該特定の分野に関する研究、研究の指導若しくは教育と関連する事業を自ら経営する活動。
ロ 本邦の公私の機関との契約に基づいて当該機関の事業所において自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する情報処理に係る業務に従事する活動。
ハ、ニ省略。

(参考資料)「出入国管理及び難民認定法」「出入国管理及び難民認定法施行規則」ほか

北京オリンピックを控える中国で、5月12日に発生したマグニチュード8.0の四川省大地震。報道によると、6万人超の死者、30万人以上もの負傷者が出ているそうです。心から哀悼の意を表します。

 現在、日本には56万人あまりの中国出身者が在留しており、各方面で活躍しています。彼らの親戚や知人が、今回の地震で被害を受けた地域にもたく さんいるはずです。故郷の大地が数百キロにわたって裂け、崩れ、親しい人々が悲嘆に暮れている映像を日本で目にする彼らの心中は、察するに余りあると言え るでしょう。とくに福岡に住む私たちは、3年前の福岡県西方沖地震の経験を鮮明に記憶していますので、地震の恐ろしさや、それによるさまざまな不安を他人 事とは思えません。被災地での迅速な救援活動を願っています。

 中国出身の彼らをはじめ、さまざまな国からの外国人労働者の受入れ促進や、少子高齢化社会に対応できるような出入国管理行政のあり方、また外国人旅行者の訪日促進を通じた観光立国実現への取組みなどに関して、法務省は「出入国管理基本計画」を策定し、推進しています。
 しかし、24万人と言われる不法滞在者や外国人による犯罪の多発など、多くの課題を抱えていることも事実であり、思うように進んでいません。

 「出入国管理法」では外国人に対して、研究、留学など高度な専門知識、専門技術を習得することを目的に在留の道が開かれており、原則、単純労働は認められていません(在留資格については、第1回講座で説明)。
 残念ながら現状では、このような制約が優秀な外国人を日本から遠ざけることにつながっていると考えられます。
 そこで優秀な外国人は、アメリカなどのハイテク企業への就職を目指すことになります。しかし、アメリカでは9.11のテロ以降、政府は移民などに対して神経質になっており、優秀といえども外国人の就職は容易ではありません。
 今こそ、我々は真剣に将来の人材について考えるべきではないでしょうか。

 将来、日本がさまざまな分野で人材不足という問題に直面することは、避けられない事実です。明晰な頭脳、優秀な人材を外国から呼び込み、確保する ための制度設計を政府に求めるとともに、民間企業の意識も変えていかなければなりません。それが、今、取り組むべきことなのです。

 大分県別府市での取組みは、外国からの人材活用のモデルケースとして注目すべきものです。留学生がしっかりと地域に根付き、地域の活性化にもつながっています。
 民間でも、将来に備えて人材確保 の面で国際化を進める必要があると思います。       

今回より、行政書士という立場から、全12回にわたって出入国管理行政に関するご紹介をさせていただきます。少子高齢化社会の進展にともない、外国 人介護士の受け入れへ向けた取り組みを開始した企業が増加しています。今後、外国人労働者の人材活用を検討する機会が増えることが予想されますが、本講座 がその取り組みの参考になれば幸いです。

 はじめに、行政書士と出入国管理制度との関係について述べます。
 日本に入国、または日本から出国するすべての人たちの公正な管理を目的として、「出入国管理及び難民認定法」が定められています。海外に旅行する際に、お世話になっている法律です。

 そのなかで、外国人が日本に在留する法的地位としての「在留資格」には、たとえば「教授」、「投資・経営」などの就労が認められるものや、「留 学」などの原則として就労が認められないもの。また、その他活動に制限の無い在留資格として、「永住者」、「日本人の配偶者等」など、27種類の在留資格 が定められています。
 個々の外国人の能力や経験を日本の社会で活かすためには、それに適合した在留資格が必要であると考えて良いでしょう。

 「出入国管理及び難民認定法」に基づき、「出入国管理及び難民認定法施行規則」が制定されています。日本に在留する外国人は、在留資格の変更、在 留期間の更新といった各種申請を行なおうとする場合、原則として、地方入国管理局などに出頭して手続きを行なわなければなりません。

 しかし、上記の目的がほかの方法で充足される場合には、本人の出頭が免除される「申請取次」制度もあります。たとえば、日本において外国人が企業 経営を行ないたいという場合、「投資・経営」という在留資格が必要です。その際、行政書士をはじめとする地方入国管理局長が適当と認めるものが、本人に代 わり申請手続きを行なっています。

 今後、各国との間で進められている経済連携協定(EPA)の発効など、出入国管理行政を取り巻く環境は激しく変化するでしょう。こうした状況のなかで、外国人労働者の人材活用を検討することは、経営戦略という観点からも必要不可欠となるでしょう。


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