【北京=白岩賢太】北京五輪のチケットを高値で販売するダフ屋が北京市内で横行している。正規料金の100倍以上で 売買されるケースもあり、競技数が少なくなる閉幕が近づくにつれて、価格は高騰の一途だ。中国語で「票販子」と呼ばれるダフ屋。公安当局も目を光らせてい るが、チケットを入手しようとする人と、少しでも高値で売りたいダフ屋は後を絶たず、ぎりぎりの“商談”が続く。
メーン会場の国家体育場 (通称・鳥の巣)などに近い地下鉄北土城駅の駅前広場。「求票」と書かれた紙片を掲げる中国人や外国人観光客に加え、数十枚ものチケットをちらつかせなが ら歩くダフ屋の姿が目立つ。正午前や夕方には1000人以上が集まり、北京最大の「票販子スポット」としてぎわいをみせる。
18日夕。ダ フ屋とみられる中国人の男の周りに十数人の人だかりがあった。男が提示したチケットは14枚。陸上競技や女子飛び込みなど5種類があり、どれも1枚 2000元(約3万2000円)以上。中でも飛び込みは正規の値段が120元(約2000円)なのに対し8000元(約12万8000円)という破格の値 段がついた。
「高すぎるよ」。1人の男性が値切ろうとしたが、男は首を縦に振らない。それどころか「買わないのなら他を探す」と強気の姿 勢だ。30分後、広東省から来たという女性(56)が当日夜の陸上のチケット2枚を言い値の半額で買った。「中国初の五輪の雰囲気を味わおうと、せっかく ここまで来たんだから…」と複雑な表情を浮かべた。
別の輪の中には日本人の姿もあった。新潟県の公務員の男性(36)は、日本対米国の野球のチケット1枚を3200元(約5万1000円)で購入した。「男子ハンマー投げがあった17日の陸上競技は4000元で買った。でもサッカーW杯に比べたら、まだ安い方ですよ」中国人選手が活躍する競技はどの会場もほぼ満席状態だが、レスリングや柔道など地元ではなじみのない競技では空席も目立った。それでも原価の100 倍以上の値段で売買されるケースがあり、ダフ屋の男(47)は「中国で人気はなくても、日本や欧米には高く売れる。特に日本人はカモにしやすく、少々ふっ かけても買ってくれる」と笑いが止まらない様子だ。
旅行会社関係者によると、ダフ屋が横行する背景には「五輪史上例がない」ほどのチケッ ト不足がある。中国側がチケット総数約700万枚の大半を自国向けに割り当てたことが大きいという。しかも空席対策の一環として、北京市内の小中学校など にチケットが「タダ同然」で配られ、ダフ屋の多くはこれらのチケットを格安で入手、地方の中国人や外国人観光客らに法外な値段で売りさばいているとみられ る。
北京五輪組織委員会は、正規料金以上で五輪チケットを転売することは違法と強調。違反者は10~15日間拘置するとしており、連日 100人以上の身柄を拘束しているという。15日には原価の10倍の値段で売ろうとしたオランダ人が拘束され、北京の日本大使館も邦人に注意を呼び掛ける 通知を出した。5日後に迫った閉幕まで“プラチナチケット”をめぐる激しい争奪戦はまだまだ続きそうだ。
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