2007-12-06

中国人社員の受け入れ:留学生がもつ期待と不安

:::引用:::
今回は留学生が日本での就職時に感じる企業への期待と不安をみていきましょう。

◆留学生の期待

  一般的に外国人留学生が日本の企業で働く際は、つぎのような期待を抱いているものです。

(1)専門知識の深化

  大学で学んだ自らの専門知識を深めたいという期待ですが、こうした志向性は日本人以上に高いといえます。もっとも、留学生が日本で就職する場合は、大学での専攻と関連する分野に限るというビザ取得上の規則があるので、我が国の入国管理制度がこの傾向を補強・後押しているといえるかもしれませんが。

(2)キャリア

  専門知識を深めるとともに、管理職などマネージメントを志向する点は各国共通です。留意しなければならないのはキャリア形成の時間軸です。中国やインド、ベトナムなどの成長国では慢性的な管理職不足という状況があり、大学を卒業すれば比較的短期に管理職に登用されますが、日本企業の場合は長期間のキャリア形成が通常であり、昇進するにもある程度時間がかかります。留学生本人は母国の昇進スピードを知っていますが、日本と母国ではキャリア形成の時間軸が異なるということは、企業、本人ともによく理解しておく必要があるでしょう。

(3)日本での生活そのもの

  日本という国で(またはある地域で)暮らしていきたいという、日本での生活そのものへの期待もあります。「生計をたてる軸足を日本に置いておきたい(母国に帰ったら仕事がない)」という考え方や「母国に比べて社会インフラが整った日本での暮らしが魅力的」という考え方もあるようです。

◆留学生の不安

  一方、留学生はどのような点に不安を感じているのでしょうか。それは概略つぎのようにまとめることができると思います。

(1)適応

  職場にうまく適応できるかという不安です。適応不安といっても「対人適応(日本語コミュニケーションを含む)」に関する不安があれば、「職務適応(業界知識、業務スキル)」ができるかという不安もあります。また多くの留学生や外国人社員は、終身雇用・年功序列というシステムがいまだに支配的な日本の企業でうまくやっていけるのか?という根本的な不安をもっています。

(2)評価

  日本企業への適応とあわせて、「職場できちんと評価されるのだろうか」という不安も決して小さいものではありません。上述した専門知識の深化やキャリア形成に対する期待というものが大きければ大きいほど、評価への不安も大きいといえます。

(3)Why Japan?

  これは上記(1)(2)とは次元のことなる不安ですが、留学生たちは日本での就職活動をきっかけに、「Why Japan?(どうして日本なのか)」という大きな問いに直面することがあります。なぜアメリカやヨーロッパ、あるいは中国やインドでなく、日本なのか。答は人それぞれですが、個別の不安の前に、このように大きな問いがあることも事実です。ちなみにエンジニアの場合はどこの国の人材であっても、「ITであればシリコンバレー」「金融であればウォールストリート(ニューヨーク)かシティ(ロンドン)」「物づくりや品質管理などのプロセスコントロールは日本」というイメージが出来上がっているようです。

  以上、「留学生の期待と不安」の代表例をご紹介しました。前回ご紹介した「企業の期待と不安」と比べて如何でしょうか。ビジネス上のロジックも大切ですが、相手の持つ感情的な背景―これは往々にして漠然としたものですが―を理解した上でコミュニケーションを図ることが大切です。

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