12月2日の日曜日、今年も世界中で日本語能力検定試験が実施された。インドの南部のチェンナイでも、市内中心 部の「MEENAKSHI COLLEGE」で実施された。今年は南インドの試験会場がチェンナイと新たにバンガロールの2カ所になったため、チェンナイ 単独での受験生は昨年より減少した。しかしバンガロールと合わせて2900人が受験を申し込み、ついに初めて西インドのプネを抜いてインドで最大の受験者 数となった。(竹田孝治のインドIT見聞録)前回のコラムでも日本語教育のメッカであるプネを紹介したが、商都であるムンバイを中心とした西インド全体の受験者数を南インドが超えたのには驚かされた。ITと製造業で発展する南インド4州と日本の関係拡大を表しているのであろう。
試験会場を一通り見させてもらった。試験の監督官は見知った人たちが多い。AOTS同窓会(注)タ ミール・ナドゥ州センターのメンバーである。受験生にもよく知った顔がいる。ソフトウエア会社の技術者だけでなく、企業の受付の人とか運用担当スタッフも いる。少し残念なのはマネジャー層の受験者に会わなかったことである。そのためか、1級と2級の受験者は圧倒的に女性が多かった。
さて少しさかのぼる11月24日の土曜日、インド最大のソフトウエア会社であるタタ・コンサルタンシー・サービ シズ(TCS)は日本での組み込み分野の事業拡大に大型投資をすると発表した。報道によると、「日本企業の技術革新やグローバル競争を手助けするため、組 み込みシステムの分野における投資継続を行う。今後1年間で、組み込みシステムの研究開発に1000万ドルを投資する」とのことである。
TCSには現在世界の顧客向けに6500人以上の組み込みシステムの技術者がおり、その中で日本向けにはプネ、 コルカタ、バンガロールに500人の技術者がいるという。さらに、日本顧客のニーズに特化した2番目のオフショアデリバリーセンター(J-ODC)をプネ に開設する。そのようなこともあり、日本語を話せる技術者を増やすらしい。
インドのソフトウエア大手は従来より金融、証券、保険の分野で非常に強みを持っている。しかし日本市場では商慣習の違いなどによる参入障壁のために、この分野では大手顧客になかなか食い込めていないのが現実である。
それに引きかえ、日本の組み込み系ソフトウエアの分野では絶対的な技術者不足が続いており、商慣習の違いなどに は関係なく、技術と品質だけで参入することが可能となる。日本への進出を強化するためには、業務アプリケーションの分野から組み込み系へとシフトさせる必 要があるとTCSも判断したのであろう。
しかし組み込み系ソフトウエアの分野でTCSが成功できるか否か、それは日本の厳しい品質基準を同社が追求できるか否かにかかっている。いつまでも「日本の要求品質は過剰品質」などと言っているようだと、日本の顧客の心はつかめないであろう。
日本語能力検定試験が行われた2日の夜、チェンナイ中心部のGRTホテルで日本人会恒例の「年末パーティー」が 開催された。この会では日本語補習校の子供達による「劇」と、毎年新しく赴任した人たちによる「新人芸」の披露がある。しかし新人だけで50人を超え、昨 年までは2チームだった新人芸が今年は3チームとなった。日本企業のインド進出も本格的に始まろうとしている。来年は更に新人が増えるであろう。増えすぎ て来年も同じように「年末パーティー」を実施できるのか、それが関係者の心配の種となっている。
(注)AOTS同窓会:経済産業省所管の財団法人「海外技術者研修協会」(AOTS)の研修事業により日本で研修し帰国した研修生がAOTS研修という共通体験を基盤に結束し世界各地で自主的に組織したNGO。現在、世界43カ国70カ所に設立されている。
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