介護福祉士・看護師を目指し、インドネシア人二百八人が今夏に来日した。今は日本語などの研修中だ。大半が来年一-二月から高齢者施設などで働き始める。人材不足が深刻化する介護分野の“助っ人”になるのか。準備の現状をまとめた。 (飯田克志)
「看護師として七カ月間働いていたが、新しいことに挑戦したくて」「春に大学を卒業して、国内で仕事が見つかるのを待つよりと思い応募した」。デフィド・アンディカ・アグスティアさん(23)と、スリスティアニングシーさん(22)は笑顔で話す。
彼らは海外技術者研修協会・横浜研修センター(横浜市)で、介護福祉士候補者の仲間四十三人と、日本語や生活習慣を学ぶ日々を送る。
厚生労働省から受け入れ事業を委託されている国際厚生事業団によると、候補者は同国の大学や専門学校を卒業し、看護師資格を持っているエリート層。だが、大半が日本語を学んだことはなく、日本の知識もなかった。母国に介護福祉士のような介護職もなく、介護知識も乏しい。
研修は日曜以外毎日。午前八時四十五分から午後四時半まで、昼食などはさみ計六時間。日本語学習が全体の約八割。日本社会で暮らすための社会適応 研修もあり、電車の乗り方やごみの分別など生活面や経済、地理、両国の文化や習慣の違いを学ぶ。介護についても約四十時間で基礎を学ぶ。
「両親と離れているのが少し寂しい。日本語もだんだん難しくなって大変」とスリスティアニングシーさん。同センターの米田裕之所長は「夜や日曜にも自習していて、非常にまじめで、純粋な方が多い」と好印象だ。
ただ、候補者たちが、受け入れを決めた各地の五十三施設に散り、仕事をしながら日本語と介護を学び始める一月以降が本番。現場で彼らを支援するさまざまな取り組みも求められる。
同事業団は、電話の相談窓口を設置。介護・看護、メンタルヘルス、労務の専門家を年一回以上巡回させる。施設にイスラム教などインドネシアの文化や生活を解説した冊子も配布した。
候補者たちもインターネットに専用HPを作った。デフィドさんは「情報交換し、お互いに支え合うため」と話す。
支え合いを考え一施設に二人以上を勤務させることを原則としているが、施設側と候補者の希望もあり、十三人が単独勤務となる。外国人看護師・介護 士政策を研究する九州大学の平野裕子准教授(保健医療社会学)は「巡回も必要だが、候補者同士の支え合いがメンタルヘルスでもっとも大切。集まれる機会を 設けるべきだ」と指摘。受け入れ側のある施設も「簡単な会話集や通訳派遣を気軽に依頼できる態勢があるといい」と訴える。
二人は「自分が適応できるかちょっと心配。でも、新しい場所で私のおじいさんおばあさんぐらいの人たちを、介護することが楽しみ」と意気込む。インドネシア人たちの研修は進むが、職場となる施設側でも受け入れ態勢などをめぐり、課題が浮かび上がっている。
<インドネシア人介護福祉士・看護師受け入れ制度> 両国政府が二〇〇七年八月に署名した経済連携協定(EPA)により新設された。今年から二年間 で介護福祉士・六百人、看護師・四百人の候補者を上限に受け入れる。今年は百四人ずつ来日した。介護福祉士になるには三年以上の実務が国家資格試験の条件 であるため、在留期間四年間に一回受験できる。看護師は在留期間三年で、受験は三回までできる。合格すれば日本で働き続けられる。フィリピンとも同じ制度 の導入が予定されている。
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