2009-02-09

3G時代の三雄覇権争い 中国移動は先発の優位を保てるか

:::引用:::
2009年1月7日午後2時すぎ、工業情報化部部長の李毅中氏、副部長の奚国華氏、科技司副司長の張新生氏が工業情報化部のホールに現れた。そして2時半ごろ、彼ら工業情報化部の指導者たちが、通信事業者への3G(第3世代携帯電話)免許の交付を正式に発表した。

 中国移動(チャイナモバイル)は中国独自規格のTD-SCDMA、中国聯通(チャイナユニコム)はWCDMA、中国電信(チャイナテレコム)は CDMA20001Xの免許をそれぞれ取得した。中国移動が先に免許を取得し、中国聯通と中国電信は後回しになるのではという観測ははずれた。

 1月7日、香港株式市場では3G免許の交付を機に利食い売りに押され、うち中国通信株は午後になると、市場の下落を後押しした。午後3時52分時 点で、中国聯通の株価は(前日を)10%下回り、9.16香港ドルをつけた。中国電信は6%下落の2.82香港ドル、中国移動は4.8%下落の79香港ド ルで、80香港ドルの大台を再び割り込んだ。同日、A株(中国国内限定)市場では、上海A株指数が13.13ポイント下落し、そのうち通信セクターと3G セクターが同様に相場の下げをけん引。中国聯通は寄り付き5.34元と高値だったが、終値は1.89%安の5.19元で取引を終了した。

 「中国移動にとって、この時期の免許交付は確かに不利だ。TD-SCDMAは3方式の中で最も完成度が低く、3つの免許を同時に発行すれば、中国 聯通のWCDMAと中国電信のCDMA20001Xが、完成度の高さで優位を占めることは明白だ。サービスの同時スタートということになれば、ユーザーが どういう選択をするか、答えは明らかだ」と中国移動通信研究院の関係者は率直に語った。

 しかし「人間万事塞翁が馬」だ。先のことは誰も予測できない。

 先の関係者は「実際、3G免許の交付は何度も先延ばしにされ、中国移動は最大限の延期を許されてきた。また、国の政策は、規制政策としてまず TD-SCDMAをサポートし、次に競争のバランスをとることを重視している。以上の2つから、中国移動は不利な形勢を十分立て直せる」とし、中国移動は すでに一連の措置を講じており、まもなく直面する試練に立ち向かう準備ができていると語った。

「3本の矢」が同時に放たれた背景

 昨年12月初め、3G免許交付のうわさがますます頻繁にささやかれるようになった。このとき、関係筋から次のような情報を得た。「3つの3G免許はそれぞれ別々に交付され、中国移動が一番乗りで免許を取得し、中国聯通と中国電信の免許交付は後回しになるだろう」

 「免許の交付については、専門家の間でも意見が分かれていた」。1月7日、免許交付後、工業情報化部内の関係者は、国務院が3G免許の交付を審議 する前に、関連部門で内部討論会が開かれたことを記者に明かした。当時数人の教授がこの会議に出席したが、3免許をすぐに交付するか、それとも時期を遅ら せるかが論議の焦点になったという。

 会議では、ある専門家が中国の通信事業者すべてのTD-SCDMA参入を主張し、「今直ちに3免許を交付することは、TD-SCDMAを支持せ ず、打撃を与えることになる」とした。また別の専門家は「TD-SCDMAの発展にはまず市場が必要で、商用化が必要だ。他規格によるTD-SCDMA離 れはすでに現れており、ますます進む傾向にある」と指摘した。

 しかし最終的には、3つの免許を同時に交付するという結論に達した。

 「実際、中国移動がTD-SCDMAの商用化サービスを試行して1年が経とうとしているが、これはすでに免許が先行して交付されているに等しい。 もしこのまま免許の交付が遅れれば、通信業界を再編することで、通信事業者の競争のバランスをはかるという目標に反することになる。これ以外に、世界的な 金融危機という大きな背景のなかで、内需刺激の必要についても考慮しなくてはならない」。中国移動通信研究院の関係者はこう述べて、3免許を同時に交付す る政策に理解を示した。

 しかし3G免許の同時交付で、中国移動が厳しい試練に直面することは避けられない。

 「TD-SCDMAのユーザー数は市場の予測に比べ、はるかに少なく、中国移動は3G市場で次第に周辺化していくと予想される。その理由はTD- SCDMA携帯端末に競争力がないことだ。中国移動が契約者にポイント還元を行ったとしても、十分な数のユーザーを引きつけることはできない」。招商証券 の通信業界アナリストである曽斌氏は、2年でTD-SCDMA携帯端末のユーザーを1000万人以上に増やすことは困難だと率直に語った。

 昨年、中国移動は率先してTD-SCDMAモデルの試験運用を開始したが、ユーザーの満足度は概して高くないようだ。昨年末の調査では、中国移動のTD-SCDMA携帯端末に満足していると答えたユーザーは13.7%にすぎなかった。

 「もし中国移動が引き続きTD-SCDMA携帯端末に多くのポイントを還元すれば、その額は膨大になる」と曽斌氏は言う。去年のオリンピック期間 中、端末のポイント還元額は1台あたり1000~1500元だったという。しかし今年は中国電信や中国聯通が優位な3Gプロジェクトに対抗して、TD- SCDMA端末のポイント還元額は1500~2000元に増えるだろうと曽斌氏はみている。「仮に携帯端末200万台にポイント還元したとしても、その額 は30億~40億元にのぼる。もし1000万台ならば1500億~2000億元だ」

 「それにユーザーの大幅増ができたとしても、満足度が昨年と同じように低ければ、中国移動が長い間かけて築いてきたブランドイメージを損なうだけだ」と曽斌氏は付け加えた。

 中国の通信産業には次のような事情がある。再編前、中国電信と中国網通(チャイナネットコム)は固定通信、ブロードバンド、インターネットなどの リソースを独占し、中国移動はユーザーリソースの大半を確保していた。これに比べ、中国聯通にはリソース面での優位がなかった。しかし再編で、中国聯通が 中国網通を吸収合併したため、中国聯通と中国電信が固定通信、ブロードバンド、インターネットのリソースを独占することになった。3G免許の交付は、短期 的にみれば、中国移動のリソース面での優位をそぐことになる。今後すべてのサービス競争で、中国移動は大きな試練に直面することは明らかだ。

 申銀万国証券の通信業界アナリストである方ロ(注:ロは王偏に路)氏は、「中国聯通と中国電信の営業収益の増加率は、今年に入ってから上昇し、 2013年には中国移動に近づくだろう」と率直に語る。方氏の予測では、2009年、中国移動、中国聯通、中国電信3社の収益増加率はそれぞれ 11.24% 、3.19% 、1.54%、2013年には、8.83%、7.59%、8.62%になるという。

政策支援があればTD-SCDMAにチャンス

 「国の関連部門は、わが国が独自開発した方式であるTD-SCDMAを優先的にサポートするだろう」と中国移動通信研究院の関係者は強調した。

 だが、中国移動の3G事業は「産業のレベルアップや変革は技術の発展によるのか、それとも政策によるのか」という業界が抱える問題をクローズアップすることになった、と指摘する業界関係者もいる。

 方ロ氏は「通信業界大手の中国移動は、これまで中国市場では向かうところ敵なしだった」とし、「3G免許が交付されても、最初、中国移動はハイエ ンドユーザーの流出に気がつかず、現場の社員にも焦りはないだろう。危機感を痛切に感じるようになって初めて、TD-SCDMAの研究開発や整備が本格的 に進むのではないか」と言う。

 「これは中国移動にとって大きな試練だが、同時にチャンスでもある」と曽斌氏。関連政策の変化がカギだと語り、「中国移動がTD-SCDMAを本格的に実用化できれば、必ず世界一流の通信事業者になるだろう」と述べた。

 「国の規制政策ではまずTD-SCDMAをサポートし、次に競争のバランスをとることを重視している。しかし圧力を加えた相手が、まさにTD- SCDMAの発展に必要な相手でもあるのだ。このため政策の制定も板ばさみ状態だ」。中国移動通信研究院の関係者は記者にこう答えた。

 しかし、この関係者は、中国移動がまもなく直面する試練にすでに一連の対応措置を準備していると強調する。「国は最も縁起が良いとされる 『188』の数字で始まる3Gの番号を中国移動に提供した。また中国移動は、TD-SCDMA固定無線端末用ホームゲートウェイ、2Gから3Gへのナン バーポータビリティ、TD-SCDMAからのナンバーポータビリティ不可など一連の対抗措置を用意している」

 「TD-SCDMAの固定無線端末用ホームゲートウェイは攻撃力の強い“武器”になる。中国移動はこれを利用して、固定通信市場に直接攻め込むことができる。カギは関連政策が中国移動のこの事業をサポートするかだ」とある業界関係者は指摘する。

 「実際、管理や社員の資質などミクロ的な基準から見れば、中国移動は間違いなく優良企業だ。しかし、これらでTD-SCDMAの劣勢を補うことができるかは、関連政策やその実施の度合いが関係する」と曽斌氏は強調する。

 1月8日、3G免許が交付されて2日目の取引日、中国移動の香港株は一時75.2香港ドルまで下落した。大引け前に少し値を戻したものの、終値は76香港ドルで取引を終了し、この日1日で株価は2.45%下落した。

(羅諾=21世紀経済報道、北京発)


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